風はいつも君色に染まる

 教会からの帰り道。来た時と同じように並んで土手の道を歩きながら、私はようやく紅君に尋ねた。 
「紅君……いつ思い出したの……?」
 紅君は「何を?」とも聞かず、私の顔を見て悪戯っぽく笑った。 
「本当は、この街に着いてすぐの頃から少しずつ……ちいにいつ知らせて驚かそうかとタイミングを計ってたのに、逆に翔太に驚かされるとは思わなかった……!」
 笑顔につられるように、私も笑う。
「本当に!」 
 ひとしきり二人で笑いあった時、私の長い髪を巻き上げるようにして、私たちの間を一陣の風が吹き抜けていった。それはこの季節では考えられないほど、穏やかな優しい風だった。 
「ちい……」
 ふいに私の名前を呼んだ紅君が、先ほどまでとは違う真剣な顔で、私を見つめる。本当はわかっていた。紅君が気持ちをこめて何かを語りだす時には、昔からいつも不思議な風が吹いた。だから次に彼が何を言いだすのかも、私にはよくわかっていた。 
「ごめん……事故に遭う前のことも、みんなのことも思いだしたけど……まだ、ちいのことだけは思いだせないんだ……」
「うん……」
 彼がそう告げるのを、予めわかっていたので、私は取り乱したりせずに済んだ。
「どんなに大切だったか、想いはわかるのに思いだせない……どうしても思いだせないんだ!」 
 ぎゅっと拳を握りしめた紅君がさらに自分を責めだす前に、私はその拳を両手で包みこんだ。
「いいよ。大丈夫。今、紅君は私の隣にいてくれるんだから……それでいい」 
 苦しい色に揺らぐ紅君の瞳が、私の顔を見つめる。できることならその辛さを全て消してしまいたくて、私はなんでもないふうを装って笑った。必死に笑った。 
「きっといつか思いだすよ……その『いつか』を私はいつまでも待てるから……だからいい」
「ありがとう、ちい」 
 紅君は少し屈みこみ、私の頭に自分の頭を軽く乗せた。
「じゃあ、その『いつか』が来るまで、ずっと俺の傍にいて下さい」 
「えっ?」
 ドキリと胸が跳ねる。子供の頃、紅君に突然想いを告げられたあの日のように――。 
 あまりに近すぎる距離から囁かれる言葉は、まるで自分自身から聞こえてくるかのようで、その近さに緊張する。紅君が放つ言葉の意味の大きさに、どうしようもなく動揺する。 
「……あれ? これじゃまるで、プロポーズみたいだね……」
 五年前に彼が私にくれた言葉と、紅君が今嬉しそうに呟いた言葉とのあまりの既視感に、頭がぼうっとした。紅君には、私に関する記憶はないままなのだから、これは単なる偶然なのだろうか。とてもそうは思えない。こういう状況をうまく言い現わす言葉を、私は知っている。美久ちゃんと蒼ちゃんが私たち二人の関係を指し、何度も言ってくれた言葉なので、しっかりと心に焼きついている。それは――『運命』。
「紅君……あのね……」
 小さく笑いながら、彼にも教えてあげようと口を開きかけたら、すぐさま止められた。私の手の間から引き抜いた両手を大きく広げ、紅君は私を包みこむように抱きしめる。
「だめ。言わないで……俺が自分で思い出すから……きっといつか思い出すから……」
「うん……」
 肩口で頷いた私に、紅君は明るい色の髪の頭をそっと寄せた。まるでとても大切なものに頬ずるかのように、私の頭に頬を乗せる。 
「だからずっと一緒にいて……ずっと……」
「うん……」 
 これ以上はないほど幸せな思いで、その日二人で見た黄金色に輝く川の水面を、私は忘れない。少し寂しげな声を残しながら、綺麗に隊列を組んで冬の空を飛んでいった雁の姿も――。
 多くのものを一緒に見た。同じ思いを感じた。大切な旅から三日後――。 

 ――紅君は何の前触れもなく、また、唐突に倒れた。

 突然に糸を切られたマリオネットのように、地面に倒れた瞬間、『ちい』とただ一言私の名前を呼んだ彼に何が起こったのか、彼が何を考えたのか、それは私にはわからない。 
 次に目を覚ました時に彼が私を覚えているのか、そもそも目覚めてくれるのかも、今はまだ、まったく見当もつかない。
 弁当屋の古いガラス扉越しに見える町の風景が、夕焼けに染まり始めると、次第にドキドキしてくる。 
「千紗。今日はもうあがりな」
「うん」 
 待ち望んでいた叔母の声が厨房からかかり、弾かれたようにエプロンを脱いで店をあとにした。このあと、夜間学校へ通う生活に変わりはないが、最近の私は、その前に行くところがある。学校帰りの学生や、夕飯の買いものをする主婦で賑わう商店街を走り抜け、そのまま駅には向かわずに、脇道へ逸れる。白いコンクリート造りの診療所の奥に、目的の家はあった。 
 私の姿を見つけて足元に擦り寄って来る猫たちと共に玄関ではなく、庭へと進む。草木に覆われた、どこか懐かしい雰囲気の庭。それに面した南向きの部屋で、彼は眠っている。 
 大きなガラス窓へと歩み寄る瞬間、目を閉じて祈るように想像してみることは、今や私の習慣になりつつあった。 
(ひょっとしたら今日は目を覚ましていて、そこに立ってるんじゃないかな……あの大好きな笑顔で、『ちい』と私を呼んではくれないかな……) 
 だが、願いと言ってもいいその想像が、現実になったことはまだない。彼はやはり今日も、庭がよく見えるベッドの上で静かに眠っていた。少し痩せた頬に影を落とす長い睫毛は、昨日と同じで固く閉じられたままだった。 
 
 唐突に紅君が倒れたあの冬の日から、二ヶ月が過ぎた。体にも脳波にも異常はなく、ただ眠っているだけだという彼は、あれからずっと意識が戻っていない。病院ではなく、病院に隣接した自宅で、蒼ちゃんとお父さんが交互に様子を見守る日々。夕方、夜間学校へと向かう前のひと時、紅君に会いに来るのが、ここ二ヶ月の私の日課だった。 
「紅君……」
 自由に出入りしていいと言われている掃き出し窓から、そっと部屋の中へ入る。いつもは今の時間つき添っているはずの蒼ちゃんが、今日は珍しく席を外していた。紅君の顔にまで伸びて来そうだった西日を遮るため、カーテンを閉める。少し暗くなった室内は、まるでここだけ時間が止まったかのように静かだ。 
「紅君……」
 小さな声で囁く私の声が、静寂に飲みこまれる。何度呼んでも、彼は目を覚まさない。
 一瞬、昨日蒼ちゃんが冗談混じりに言っていた言葉を思い出した。
『千紗ちゃんがキスしたら、眠り姫みたいに目を覚ますんじゃない?』
 真っ赤になって怒り、『そんなことするはずない!』と叫んだ私を、蒼ちゃんは笑いながら見ていた。その楽しそうな雰囲気につられ、紅君が意識をとり戻しはしないかというのが、蒼ちゃんの狙いだったのだと、本当は私もわかっていた。 
 二人だけの静かな部屋で、規則正しく寝息をたてている紅君の横顔を見ているうちに、思わずその頬に手を伸ばしそうになり、そういう自分に自分で驚いた。 
(何やってるの! 私……?) 
 決して蒼ちゃんの言うように、「キスしよう」などと思ったわけではない。ただ、もう長い間触れてさえいない紅君が、まるで幻のようで、今にも消えていなくなってしまいそうで、不安になった。「きっといつかは目が覚めるだろうから」と、みんなとは笑顔で話している。「大丈夫です。私はずっと待ってるから」と、自分に言い聞かせるかのように何度もくり返した。でも本当は、心の中では不安で不安で――。 
 このまま紅君が亡くなってしまう悪夢を見ては、今でも夜中に飛び起きる。びっしょりと汗をかき、涙を流している自分に気がつくたび、痛いほど自覚する。自分がどれほど紅君を好きなのか。彼を失うことにどれだけ怯えているのか。わかっているのにどうすることもできず、限界まで溜まった不安は、私を押し潰しそうに大きくなっている。 
「紅君……」
 一度は引いた手を、私はもう一度、眠る彼へ伸ばした。そっと触れた白い頬は、恐れていたように冷たくなどなかった。温かな血が通っている肌の感触がした。ただそれだけのことが嬉しくて、涙が零れる。
「よかった……じゃあ、学校行ってくるね……」 
 まだ彼の肌の感触が残っている指先を、胸に抱き、再び庭へと出ていく私に、言葉がかけられることはない。ふり返ってもう一度見てみても、紅君はベッドの上、先ほどの位置から一ミリも動いていない。その静穏さに、不安を煽られる。 
「行ってきます……」 
 それだけを告げ、私は走り出した。これ以上ここに留まっていると、また不安に捕まりそうで、前だけを見て一目散に紅君の家の庭を駆け抜けた。 

「どう? やっぱり今日も……?」
 学校に着くと美久ちゃんが、昨日と同じように私に問いかけた。昨日の前も、そのまた前もくり返されてきた同じ質問。私が頷くと同時に、美久ちゃんも他のみんなも、まるで自分のことのように落胆して大きな溜め息を吐くので、私は優しい気持ちになる。 
「でも、全然苦しいことなんてなさそうな顔で、穏やかに眠ってる……だから大丈夫……夢の世界でもきっと紅君は、辛い目に遭ったりしてない……」
 小さく笑いながらそう告げると、美久ちゃんにぎゅっと頭を抱き寄せられた。 
「もう! あんたって子は……!」
 その腕が温かく、思わず寄りかかってしまいたくなる。だがここで誰かに甘えたら、懸命に平静を保っている心のバランスまで崩れることを私は知っていた。だから笑う。懸命に笑う。『私は大丈夫』という強がりを真実に変えるため、誰にも涙は見せなかった。

 家へと帰る電車を降りたら、改札で私に手を振る人がいた。蒼ちゃんだった。蒼ちゃんはよく「全然似てないでしょ?」と自分と紅君のことを笑うが、やはり背格好やちょっとした仕草や全体の雰囲気は似ている。遠くから蒼ちゃんを見た瞬間、私は一瞬、紅君かと思ってしまい、そんなはずはないのに勝手に抱いた淡い期待で、内心、少し落胆した。 
「どうしたの……?」
 まさか紅君に何かあったのかと、慌てて駆け寄ると、蒼ちゃんは笑顔で首を横に振った。その動作に、何かが起こったわけではないのだと、ほっとする。 
「学校に行く前に寄ってくれたでしょ? 伝えたいことがあったのに、ちょうど電話に出てて会えなかったから……」
 並んで歩きながら話す蒼ちゃんの顔を、私は見上げた。 
「なに?」
「うん。今度、翔太君が紅也に会いに来るって……その時みんなもつれて来るから、ちい姉ちゃんにそう伝えてくれだって……」
「……みんな?」 
 紅君が倒れてからすぐに、翔太君は彼に会いに来た。紅君が眠るベッドの横に座り、長く話しかけていた翔太君は、帰る間際に、そういえば私にもそういうことを言っていた。「今度はみんなで来る」と――。 
「みんなって……」
 まさかという思いで蒼ちゃんの顔を仰ぐ。蒼ちゃんはしっかりと頷いてくれた。 
「うん。昔『希望の家』で一緒に暮らしていた、みんなで来るって……」
「…………!」
 必死の思いでずっと堪え続けている涙が、思わず浮かんで来そうだった。
「そう……」
 嬉しい。またあの頃のようにみんなが集まる。それは今、それぞれが集まれる状態にあるということだ。誰一人欠けずに元気でいるということだ。大好きだった『こう兄ちゃん』のために集まってくれる。それはみんなの絆が確かに今も存在している証明でもあり、私は嬉しくて堪らなかった。 
(みんなが来たら、紅君だって目を覚まさないかな……?) 
 あれほど愛情を注いでいた弟や妹たちが、紅君のために集まるのだ。嬉しくないはずがない。そういうみんなの気持ちを無視するような紅君ではない。だが――。 
 口に出して期待してしまえば、それが叶わなかった時の落胆がいっそう大きくなる気がして、私はその思いを蒼ちゃんに伝えることはできなかった。胸に抱いた希望は、自分の心の中だけにしまっておいた。いつになっても、傷つくことが恐い自分。望みを持つ喜びよりも、それが裏切られた時の心配ばかりしてしまう自分。紅君がいないと私は、前を向いて歩くことさえ難しい。どん底の状態の時に、手をさし伸べてくれたたった一人の人なので、誰にも代わりはできない。私には紅君しかいない。その事実を、改めて思い知る。 
「楽しみだね……」
 私を喜ばそうと、わざわざこんなところまでみんなの来訪を教えに来てくれた蒼ちゃんに、私は「うん」と短い返事しかできない。そういう私を責めるでもなく、咎めるでもなく、ただ歩調を合わせて一緒に歩いてくれる――蒼ちゃんがそういう人でよかった。本当に彼には、心から感謝せずにはいられなかった。
 約束した土曜日の午後、みんなは予定どおり紅君の家へやって来た。呼び鈴の音に転がるように玄関へ出た私は、ずらりと並んだ懐かしい顔に、精一杯の笑顔で呼びかけた。 
「いらっしゃい」
 泣かないと決めていたのに、私を見た女の子たちの顔がくしゃっと歪み、一斉にしゃくりあげ始めるから、ついつられてしまいそうになる。だが――。 
「ほら! ちい姉ちゃん、元気だろ! こう兄ちゃんだって、すぐに目を覚ますんだからな!」
 みんなを励ますように、軽く頭を叩いてまわった翔太君の言葉に、女の子たちは顔を上げた。
「お姉ちゃん!」
「ちい姉ちゃん!」
 私などをあれほど慕ってくれた懐かしい子たちが、一目散に私に駆け寄ってくる。大きく両手を広げてみんなをいっぺんに抱きしめながら、泣かないようにするのは、ひと苦労だった。
(翔太君……綾芽ちゃん、鈴ちゃん、和真君、奏美ちゃん、要君、一葉ちゃん……) 
 本当に誰一人欠けていないのが、心から嬉しかった。南向きの暖かい部屋で眠る紅君を、みんなはとり囲んで見つめる。誰も泣いたりはしなかった。真剣な顔で、これまでのこと、これからのことを順番に語った。 
「こう兄ちゃん。僕、サッカー部に入ったんだ……あの頃の兄ちゃんより、もううまいかもしれないよ?」
「ええーっ、要がぁ? ないない。それはない……!」
「なんだよ、翔太!」 
 紅君をそっちのけで喧嘩を始めそうな男の子たちをくすくすと笑い、綾芽ちゃんがそっと紅君の耳元に口を寄せる。 
「あのね、こう兄ちゃん……私、新しい家族ができたの。生まれたばっかりの弟もとっても可愛いよ。きっと仲良くするからね……」 
『そうか。頑張れよ』という紅君の返事が、聞こえたような気がした。私ははっとして、ベッドに横たわる紅君の様子を覗き見る。しかしやはり彼は、微動だにしていない。 
「私のいる施設は『希望の家』みたいに小さい子が多いから、私が最年長なの。昔、ちい姉ちゃんに教えてもらったみたいに、今は私がみんなにお料理を教えてる……」
 誇らしげに笑う一葉ちゃんに、私も笑い返した。私の隣に、すっと和真君が寄ってきた。 
「ちい姉ちゃん……僕、今なら姉ちゃんの気持ちがわかるよ……僕が何をしたって新しいお母さんは気に入らないんだ……叩かれて、思わずやり返しそうになる時もあるけど、姉ちゃんを思いだしたら、我慢できる。姉ちゃんだって耐えてたんだから、僕にもできるはずだって……僕にも仲間がいるから、いつか家を出る日まで、我慢できる……!」 
「和真君……」
 思わず言葉に詰まった。昔、紅君がそうやっていたように、元気づけるつもりで和真君を抱きしめようとしたら、翔太君に先を越された。
「和真! あんまりひどい時は、俺のところへ逃げてこい! 俺は『希望の家』があったあの場所にもう一度『希望の家』を作る! 小野寺牧師だって、絶対賛成してくれる!」
 翔太君の腕の中でうんうんと頷く和真君の肩は震えている。
「翔ちゃん……また勝手にそんなこと決めて……大丈夫なの?」
 心配げに彼を見上げる鈴ちゃんに、背後から奏美ちゃんが囁いた。 
「ふふっ、そんなこと言って、もし本当にそうなったら、一番入り浸るのは鈴のくせに……今だって、誰かさんに会えなくなって寂しい寂しいって、しょっちゅう言ってるじゃない……」 
「奏ちゃん!!」
 大慌てて奏美ちゃんの口を塞いだ鈴ちゃんは、真っ赤な顔で、眠る紅君の顔を見下ろした。 
『なんだ? 鈴は今でも翔太のことが好きなのか?』と紅君が笑い混じりでからかう声が、私にも聞こえそうな気がした。 
(紅君……ねえ紅君……嬉しいね……) 
 みんなが変わっていなくて。そのくせ心も体も大きく成長していて。あの頃の私たちのように、いろいろなことに悩んで傷つき、それでもしっかりと前を向いて歩いている。みんなが慕ってくれるほどには、私自身は成長していないような気がし、それが心苦しいほどだ。 
(だめだね。みんなのお姉ちゃんなんだから、私もしっかりしないと……!) 
 無理ではなく、精一杯の痩せ我慢ではなく、本当に笑って歩きだしたい。いつか紅君が目を覚ました時に、胸を張って「待ってたよ」と笑って言える自分でありたい。 
(うん。がんばる……私もがんばるよ……!) 
 いつまでも続く、紅君を取り囲んでの会話は、私にも元気を与えてくれた。本当に今にも、『おーい。みんなの声がうるさくって、ゆっくり寝ていられないぞ?』と紅君まで起き出してきそうだった。だが、そういう奇蹟は起きなかった。みんながどれだけ話しかけても、やはり紅君は目を覚まさなかった。わかっていたのに、期待すると落胆が大きいからと、始めから諦めていたつもりだったのに、やはり私は、がっかりした。 
(しかたない……本当に、その時を待つしかない……みんなに負けないように、私も自分の目標に向かってがんばりながら、いつかはわからないその時を待とう……!) 
 昨日までより前向きになった心で、みんなを駅まで送っていったあと、帰り着いた弁当屋の前には、蒼ちゃんが立っていた。 
「どうしたの? 今日の夕ご飯にはまだ早いよ?」 
 つい先ほど決心したとおり、明るい笑顔で話しかけた私に、青ざめた蒼ちゃんは、真剣な顔で告げた。
「千紗ちゃん……紅也がいなくなった!」 
(え? ……どういうこと……?) 
 頭で言葉を理解するよりも先に、私の足は駆けだしていた。毎日、学校へ行く前に辿る紅君の家までの道のりを、手にしていた荷物も全部放りだし、全力疾走していた。
 
 辿り着いたのは、いつもどおりの静かな庭。つい先ほどまで七人の子供たちの訪問を受けて賑わっていた家は、今はすっかり通常の静けさをとり戻している。点々と庭に配置された敷石を辿るのももどかしい思いで、庭へ面したいつもの掃き出し窓へと駆け寄ったら、そこはいつになく大きく開け放たれ、真っ白なカーテンが風にはためいていた。窓のすぐ横にあるいつも紅君が眠っていたベッドの上には、本当に誰の姿もない。 
「紅君……!」
 悲鳴のような声で彼の名前を呼び、その場にしゃがみこんでしまわないように、震える体を自分で抱きしめるのが、その時私にできる精一杯だった。 
「紅君!!」
 私の叫びは、まだ早い春の夕暮れの冷たい風に、巻き上げられて消えていった。
 商店街も、駅までの道も、蒼ちゃんの大学の近くの公園も、もちろん叔母たちの弁当屋も、紅君が立ち寄りそうなところは全て探した。あまり広くはない彼の行動範囲を、何度も巡った。だが紅君はいない。どこにもいない。 
(どうしよう……!)
 時刻はすでに、夕暮れと呼べるものではなくなっていた。 
「千紗ちゃん。あとは父さんと僕で探すから……」
 蒼ちゃんはそう言ってくれたが、その言葉を受け入れることは、私にはどうしてもできなかった。今諦めたら、本当にもう二度と会えなくなってしまいそうで、その不安が拭い去れない。 
「嫌だ……嫌だよ!」
 あれほど無理に無理を重ね、隠していた涙が止まらない。両手をぎゅっと握りあわせ、懇願するように下げた私の頭を、蒼ちゃんはいつものように優しくポンと叩いた。
「うん。わかった。じゃあ一緒に捜そう」 
 自分が足手まといだとわかっていても、今は蒼ちゃんの優しさに甘えるしかなかった。
「どこか思い当たるところはない? ……千紗ちゃん……」
 尋ねられても、首を横に振る以外ない。再会してからこの町で紅君と一緒に行ったところへは、全て足を運んだ。けれどそのどこにも紅君の姿はなかったし、見かけたという人も存在しない。 
「ううん……ない……」
 力なく項垂れた瞬間、ふと思い出した場所があった。クリスマスの夜、「今日だけ特別に開放された」と紅君が語っていた――いつもはもう使われていない教会。 
「そうだ!」
 顔を上げた私の手を取り、蒼ちゃんが先に立って走りだす。 
「どこ? なんなら車で送る!」
「ううん。すぐ近くなの!」 
 しかし、息せき切って駆けつけた古い教会には、紅君の姿はなかった。紅君が言っていたとおり、クリスマスの日は自由に出入りできた鉄製の門扉は、今日は固く閉じられたままだ。 
「くそっ! 違ったか!」
 握り締めた鉄柱を蒼ちゃんがガシャンと鳴らした瞬間、門の向こうから声がした。 
「おや? 何か忘れものですか?」
 古風な吊り下げ型のランプを手にした、灰色の修道着姿の年配の女性は、どうやら目があまりよくないようだ。蒼ちゃんの前まで来て、しげしげと彼の顔を見上げる。
「あら、ごめんなさい。別の方ですね……声がよく似てらっしゃったものだからつい……」
 女性がみなまで言い終わらないうちに、私は問いかけていた。
「よく似た人がここに来たんですか?」 
 女性はにっこりとやさしく微笑む。
「ええ、そうです。『ここはもう閉鎖されてるんですよ』ってお伝えしても、『わかってるけど、懺悔をしたいからどうか聖堂に入れて欲しい』って言われて……今日は私がたまたま掃除に来ていたから、特別ですよって、中にお通ししたんです……」 
「その人を捜してるんです! まだここに居ますか?」
 勢いこんで尋ねたら、そっと首を横に振られた。
「いいえ。ついさっき出て行かれました」
「どこに行ったか……わかりませんか?」
 蒼ちゃんの問いかけに、女性はもう一度首を横に振る。 
「いいえ。でも、まだそう遠くへは行かれてないと思いますよ……」 
「ありがとうございます!」
 頭を下げると瞬時に、私と蒼ちゃんは踵を返して駆けだした。紅君は足が悪いため、走ることはできないし、あまり早く歩くこともできない。教会を出たのがほんの先ほどだというのなら、まだじゅうぶん追いつけるはずだ。 
「紅也!」
 蒼ちゃんの叫びにつられるように、私も声を張り上げる。 
「紅君!」
 だが真っ暗になった夜空に私たちの呼び声は吸いこまれていくばかりで、紅君の声が返ってくることはなかった。どこへ行ってしまったのか、それきり紅君の足取りは掴めなくなった。
 翌日の日曜日。叔父と叔母に頼み、一日店を休ませてもらった。生まれ育ったあの街へ行ってみると告げた私に、蒼ちゃんは「僕も行く」と言ってくれたが、丁重に断わった。そこに紅君がいるという確証があるわけではないし、蒼ちゃんには大学の研修がある。
「とにかく、一度行ってみるだけだから……」
 くり返す私に、蒼ちゃんは膝を折り曲げて目線の高さを合わせ、念を押した。 
「もし紅也が見つからなくても、この町に帰ってきて……いい? 叔父さんも叔母さんも、もちろん僕も、千紗ちゃんの帰りを待ってるってことだけは忘れないで……いい?」 
「どうしたの蒼ちゃん……? なんだか変……」
 あまりにも真剣な顔に、思わず発した質問にも答えてくれず、蒼ちゃんは何度も念を押す。 
「いいから……帰ってくるんだよ」
「うん……」 
 返事をしないことには行かせてもらえない雰囲気を察し、私はやむなく頷いた。
 蒼ちゃんにはおそらくわかっていたのだろう。思い出の場所を一つ一つ巡っても、紅君を見つけられなかった時、私がどういう気持ちになるのかが――。

 昼過ぎに辿り着いた懐かしい街は、二ヶ月前に紅君と一緒に来た時と、何も変わっていなかった。あの時は凍えそうに冷たい風が吹いていたのに、今は温かい春の風が吹いていることだけが違っている。紅君と一緒に過ごした、一番思い出深い季節に、またこの道を歩くことになったのが、不思議な気もしたし、当然のようにも思えた。 
 真っ先に訪れた『希望の家』があった教会では、翔太君が私の姿を見て、ひどく驚いた。
「ちい姉ちゃん? どうしたの?」
 その反応を見ただけで、ここには紅君が来ていないことがわかる。 
「うん。ちょっと用があって……」
 苦しまぎれの言い訳にも、翔太君は変な顔をせず、私を信頼しきった目で見つめる。 
「ひょっとして……こう兄ちゃんと一緒? ……なんてことはないか……」
 キョロキョロと私の周りに視線を廻らし、私が一人きりなことを確認すると、翔太君は少し照れたように頭を掻く。 
「俺たちがお見舞いに行ったら、兄ちゃん、目を覚ますかもなんて……本当は思ってたんだ……そうならなくってごめん、姉ちゃん……」
「ううん! そんなこと気にしなくっていいの!」 
 みんなのおかげで紅君が起き上がったと、本当は言ってしまいたかった。だができなかった。紅君がどこにいるのかもわからない今の状況では、翔太君を心配させるだけだ。それに――。 
「また会いに行くから! 今度こそきっと目を覚ましてくれるよ、なっ!」
 そう言って笑う翔太君が、もう一度紅君に会える保証はない。 
(私だけじゃない……紅君のことを大切に思っている人はたくさんいる……その人たちをみんな置き去りに……いったいどこへ行っちゃったの? 紅君!) 
 これ以上話したら、平気な顔を作れなくなりそうで、私は急いで教会をあとにした。 
「こう兄ちゃんが目を覚ますほうが先だったら、また二人でここに来てくれよなっ!」
 笑顔で手を振る翔太君に別れを告げ、別の場所を目指した。
 
 二人で歩いた土手の道にも、問題の国道にも、紅君の姿はなかった。柔らかな春の陽射しが次第に傾き、西の空へと沈みかけ、タイムリミットが近いことを私に教えている。母と暮らしたアパートにも、紅君も通っていた小学校にも、足を運んでみたが収穫はない。限界を越えて歩き回ると、本当に足が痛くて歩くことも困難になるのだと、身を以って初めて知った。 
(やっぱり……この街じゃなかったんだ……)
 そもそもどうしてここだと思ったのか。その根拠でさえ今は、危うい。 
(目を覚まして……それでまだ紅君に記憶があったなら……今度こそは私のことも思い出してくれそうな気がした……) 
 だからこの街へ来た。二人の思い出が詰まったこの街を巡りながら、欠けた記憶を確かなものにし、それから私のところへ帰って来てくれるような気がした。 
(だから、先回りして追いかけてくるなんて……やっぱりこんなの……私の勝手な思いこみだ) 
 落胆してその場にしゃがみこんだら、もう一歩も動けなくなった。気力だけを頼りに動かし続けた足は、とうに限界を超えている。紅君に会いたい、もうすぐ会えるはずだと、信じる気持ちをなくしてしまったら、動くはずもない。 
(やっぱり会えない……もう会えないかもしれない……!) 
 私の想像もつかないような理由で、紅君が動きだしてしまったのなら、いったい何を信じて待てばいいのだろう。もう一度会おうと、私は約束を交わしたわけでもないし、彼が私を覚えているのかさえわからない。 
「紅君!」 
 項垂れた私の頬を伝った涙が、ポツリと地面に黒い染みを作った瞬間――風が吹いた。伸ばしっぱなしの私の長い髪を巻き上げるように、夕焼けに染まった空に向かって一直線に風が駆け上がったので、つられて顔を上げた。 
 涙で滲んだ視界の中で、小さな何かが、私に向かってヒラリヒラリと降りてくる。今は夕陽に染まって赤く見えるその小さな『何か』が、淡いピンク色の花びらだと見て取り、私の目から涙が零れ落ちた。いくつもいくつも零れ落ちた。 
「さくら……」
 あの遠い春の日。紅君と二人で見た景色のように、空から降ってくる花びらを、そっと両手で受ける。握り潰してしまわないように、大切に受け止める。気がつけばいつの間にか、私は桜の大木のすぐ近くにいた。どこをどう歩いて辿り着いたのかさえ、記憶にない。大きな桜の木の傍に、しゃがみこんでいた。
 瞬間、背後で声がした。 
「いつも見てたんだ……気がつくとその子のことばっかり見てた。あまり目立つ子じゃなかったし、男の子と話すタイプでもなかったから、なかなか話すタイミングが見つからなくて……そうこうしているうちに、その子がある日、パッタリと学校に来なくなった……」 
 聞き違えようのないその声に、ふり返ろうと思うのにできない。一気に駆け上ってきた震えるような驚きに、大きくしゃくりあげて咽び泣いているような状態では、とてもふり向けない。 
「……義理の父親に殴られて、大怪我をしたって聞いた……事実、数日後に学校に出てきたその子は松葉杖で……顔にもいっぱい怪我してた……」
 必死に嗚咽を堪えていると息を吸うことさえ難しい。頭も胸も、たった一つの思いで満たされているのに、それを口に出すことができない。ただぽろぽろと涙を零し、彼の言葉を背中で聞き続けるしかない。 
「なんで守ってやれなかったんだろうって、すごく後悔した。恥ずかしいとか、みんなにからかわれるかもとか、そんなちっぽけな思い……あの子が傷つくことに比べたら、なんでもなかったのに!」 
 背中からふわっと私の肩を包むように回された両手が、座りこんだままの私の体を抱きしめた。先ほどまでよりずっと近く、私の頭のすぐうしろで、優しい声が聞こえる。
「守りたいって思った。他の誰からも、何からも、俺が絶対守るんだって自分に誓った。それなのに、その思いさえ忘れて……一番大切な君のことを忘れて……!」
 力をこめて自分を抱きしめる腕に、私は恐る恐る指先で触れた。確かに感触があっても、背中で彼の体温を感じても、夢じゃないかと疑う気持ちがどうしても拭えない。もう六年間も、何度も何度もくり返し見てきた、優しくて残酷な夢の続きなのではないかと思える。だが――。 
「ゴメン、ちい……それでも好きだよ……誰よりもやっぱり……君が好きだよ」 
 私の頭に自分の頭を押しつけるようにして、一番近い場所で彼が囁いた言葉だけは、嘘にしたくない。夢でも幻でもいい。彼が私を思い出してくれたのがたとえ今この一瞬だけでも、私にとっては一番大切な宝物として、ずっとずっと心の中にしまっておきたい。 
「紅君――!」
 叫ぶように名前を呼んだ私を、彼はかき抱くようにもう一度強く背後から抱きしめた。もう決して放さないという意思表示のように、自分は確かにここに居るということを私に知らしめるかのように。
(この腕を信じる……抱きしめる強さを信じる……たとえ運命が、もう一度彼から私の記憶を奪っても、私だけは決して忘れない!) 
 その思いをこめ、私は萎えていた足に力を入れて体を捻り、自分から彼の腕に飛びこんだ。
「紅君!」 
 夢でも幻でもなく確かに夕焼けの中に、大好きな人は存在していた。
「ちい……ただいま」  
(ああ、紅君だ……本物の紅君に……もう一度会えた……!) 
 溢れる涙は、やはり止まらなかった。
 翔太君たちの来訪を受け、しばらくしてから目を覚ました紅君は、はじめのうちは記憶が混乱していたらしい。ここがどこなのか、自分は何をしているのか、よくわからないままにベッドから起き上がり、部屋から抜け出し、歩き始めた足が思ったように動かなかったことで、様々なことを思い出したと語ってくれた。 
「早くどこかへ行かなくちゃって、ずっと心に抱えていた思いが、火事の『希望の家』へ向かった時の思いだったんだってわかって……悔しかった……」
 昔のように川沿いの土手に二人で並んで腰を下ろし、私たちは様々な話をした。川に向かって時々、思い出したように小石を投げながら語る紅君が、どれほど悔しいかは、私にはよくわかる。あの事故で、三日後に私が目を覚ました時には全てが終わっていたのと同じく、紅君にとっての『その時』も、もう六年も前に終わってしまっているのだ。 
「今さらだってわかってても、どうしても園長先生に謝りたくって……近くの教会で懺悔させてもらったら、踏んぎりがついた。ちいに会う前にもう一人、どうしても俺には会わないといけない人がいた……」 
「会わないといけない人?」
 思いもかけない話に、私は首を傾げる。紅君は頷いてから、隣に座る私へ顔を向けた。もう沈みかけた夕陽が紅君の顔に影を作り、そのせいか、先ほどまでより悲しげな表情に見える。
「うん。ちいのお母さん……『約束守れなくてすいませんでした』って謝らないうちは、俺にはちいと会う資格がない気がした」 
 私ははっと息を呑んだ。
(じゃあ……紅君がこの街に来たわけは?) 
「墓前で頭を下げてきた。そしてもう一度誓いを立ててきた。『今度こそ約束を守ります。ちいのことはこれから俺が守ります』って」
「紅君……」
 肩に回した腕に力を入て、紅君が私を引き寄せるから、私はもう一度彼の胸に倒れこんだ。ドキドキと、体全部が心臓になったかのように緊張している私と同じほど、紅君の鼓動も速い。そのことがなおさら私をドキドキさせる。 
「やっぱり俺にはちいしか見えないみたいだ……何度記憶を失くしたって、次に出逢ったら、もうその瞬間からちいのことしか考えられない……なんとかして笑顔を守りたくって、それしか頭にない……こんなの自分でも恐いくらいだよ……ちいは? ……俺が恐くない?」 
「恐くなんかない!」
 夢中で叫んでから、私ははっと紅君の顔を見上げた。手を伸ばせばすぐに触れられるところにいてくれる人へ、そっと両手をさし伸べる。 
「恐くないよ……何があったって、誰と出会ったって、紅君が忘れられなかったのは私だもの……遠い昔の約束をずっと大事にして、それだけを大切に生きてきたんだもの……記憶があるぶん、紅君のことをずっとしつこく諦めきれなかったのは、私のほうだよ……だから嬉しい……また会えて……また傍にいれて嬉しい……!」 
 ポロリと私の目から零れ落ちた涙を、紅君が指先でそっとすくう。どちらからともなく頬を寄せ、私たちは笑顔になった。私を見つめる紅君の優しい笑顔に負けないほど、私も笑顔になった。 
「行こう。ちい」 
 立ち上がった紅君がさし出してくれた手を、しっかりと掴む。もう二度と離さないようにと、願いをこめて握りしめる。 
 川面に残っていた夕陽の残像が、きらきらと煌きながら水のうねりに呑みこまれた瞬間、カラーンと澄んだ鐘の音が、微かな橙色と深い紫色が混ざる空へ響き渡った。夕暮れだというのに、まるで新しい夜明けを告げる祝鐘のように――。 
 私たちの頬を撫でて吹き抜けていった風が向かう先は、二人で自転車に乗り、何度も向かった場所。最後の一回は、焦りや憤りでぐちゃぐちゃになった感情で、冷静さを欠いて向かうしかなかった場所。あの時は辿り着けなかった。だからこれからやり直すのだ。 
 今はもうあの場所に、私たちを慈しんでくれた園長先生はいない。だが目を閉じればいつでも、「お帰り」と両手を広げて待ってくれている。だから今度こそ二人で辿り着こう。『希望の家』へ。余計な感情は全て六年前に置き去りに、小さな子供の頃の純粋な心のままに、「ただいま」と帰ろう。紅君が私にそうしてくれたように。そこからきっと、新しい未来が始まる。
 私の手を引き、先を行く紅君の歩みは、子供の頃の軽やかな彼のそれとは比べものにならない。だが、このほうがいい。急ぎすぎて様々なものを失くしてしまった私たちには、今はゆっくりと時間をかけ、次の場所へと辿り着くくらいがちょうどいい。
 そのほうが、二人でいられる時間が長いということを、欲ばりな私は知っている。目指す場所がたとえどんなところでも、そこまでの道のりを、時間を、これからはずっと二人で共有していられる。 
「紅君……」
 唐突に呼びかけた私に、紅君がふり返る。 
「何?」
「好きだよ。大好き」
 何度伝えても伝えきれない想いを言葉にしたら、繋いだ手に力をこめられた。
「うん。俺も大好き。ちい」
 子供の頃に彼から貰った魔法の言葉が、またもう一度私に魔法をかける。何度でも何度でも。紅君が傍にいてくれるかぎり、これからはもう決して色褪せることはない。いつだってまたこうして貰えるのだから。 

 大好きな笑顔と、『ちい』と私を呼ぶ声――子供の頃から、たった一つだけ欲しかった宝物を、私はその日、手に入れた。

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