数時間後、ラルフは森の脇に作られた柵の中に生け捕りにした豚を300頭放り込むことに見事成功していた。

「本当に300頭生捕りにされたのですね」

「お飾りの団長を頭に据えておけるほど、うちの騎士団の連中は礼儀正しくないからな」

泥と埃にまみれたラルフは高らかに笑った。

「でも、さすがに300頭は骨が折れた。途中で領民が助けてくれなかったら、明日までかかっていたかもしれぬ」

正直に言って豚を300頭仕留める方が簡単だった。生け捕りにするにはいくつかコツが必要で、見かねた領民が豚の弱点を教えてくれたのだ。あとは正確に狙える剣の腕と度胸さえあれば何とかなった。

「私の働きはマリナラ殿のお眼鏡にかなっただろうか?」

「ええ、十分ですわ」

マリナラはラルフを待っている間に新たな契約書を書き起こしていた。

「それでは今日のラルフ様の働きに免じて、残りの1億ダールは分割払いと致しましょう。その代わり、月々の利息をお支払いください」

「承知した」

「利息は元金の2%を頂きます。元金を返済する場合は月末までにお願い致します」

「承知した」

「よろしいのですか?はいはいとよく確かめもせずに返事をなさって」

「分割払いにしても踏み倒さないと信用してもらった分を返しているだけだ」

「1億ダールを一括でお支払い頂くよりも利息を払って頂く方が利益になると判断したまでです」

手放しで信用されることに居心地の悪さを感じたのか、マリナラは素っ気なく答えた。

「それではラルフ様、こちらの契約書に署名を頂けますか?」

マリナラは契約書を差し出すと、極上の笑みを称えた。

(ああ……くそっ……)

署名を終えたラルフは契約書を返しながらこう言った。

「マリナラ殿、正直に言おう。私は貴女に本気で惚れている。これから全力で貴女を口説く」

「……どうぞご自由に」

そうは言ってもマリナラは簡単に口説きおおせるほど甘い女性ではない。

……だがそれがいい。

ラルフに人生においてこれほど心躍る勝負がこれまであっただろうか。

肩書に屈せず、決して自分の価値を安売りしないという固い意思に心が惹かれていく。

だが、ラルフとて負けぬ勝負はしない性質である。