ロンデに乗り屋敷から去っていくラルフを見て、ララ姫はある種の寂寥感に襲われた。
「追います!!」
「待て、ケイネス。追わずともよい。妾達の目的は既に達成されておる。逃したのは惜しいが今回はここまでとしよう」
蜜色の薔薇を使おうとも、揺るぎない芯のある心を挫くのは難しい。
あるいはラルフに想う人がいなければ結果は変わっていたかもしれない。
ケイネスは憤りを隠そうともせず、ララ姫に訴えた。
「納得がいきません!!あやつ、まるで姫様を男好きの尻軽のように……姫様が許そうとも私の気が収まりません!!」
ララ姫はケイネスの首に腕を伸ばし引き寄せた。
「其方は可愛い男だのう。妾の代わりに怒っておるのか?」
ララ姫はクスクスと笑いながら、ケイネスを黙らせるように深く口づけた。
「男好きは否定せぬ。ケイネス、其方のような若く逞しい男達を独占しておるからな」
クルスでは王族の姫は皆、優秀な軍人を婿に取る。
領土拡大路線を敷くクルスでは、いかに優秀な軍人を婿にできるかで姫の力量が決まる。その為の一妻多夫制である。
ララ姫はケイネスの耳に唇を寄せ、吐息をたっぷり含ませ甘えるように言った。
「妾の可愛い夫よ。今宵は勝利の祝いとして思う存分愛でてやろう」
ララ姫はケイネスの耳たぶを甘噛みし、ねっとりと舌でねぶった。
「ああ……ララ姫様……!!」
ケイネスは感極まったように身震いし、ララ姫の身体に貪りついた。
薄いローブを脱がせると白い身体が浮き上がり、まるで大地に降臨した女神のような神々しさを放つ。
……ケイネスとて男である。
愛しき姫が他の男を口説く様を見せつけられるのは我慢ならない。
ラルフへの嫉妬心を全てララ姫に注ぐべくケイネスは盛りのついた犬のようにひたすら腰を振った。
「ああ……。よいぞ、ケイネス……もっと……もっとだ……!!」
屋敷にはララ姫の嬌声が一晩中鳴り響いたという。