リンデルワーグ王国といえば、大陸の中でも豊富な水源と温暖な気候を誇る国である。

隣国と国境を分かつ北の山脈は野生動物の宝庫であり、南には大いなる恵みがもたらされる穏やかな海、首都レジランカを要する中央平原では小麦が良く獲れる。

それ故に昔から国境付近においては小競り合いが絶えなかった。リンデルワーグは領土には恵まれてはいたが四方を他国に囲まれており、立地に関しては目も当てられない状況だった。

侵略を恐れた歴代の国王は東西南北それぞれの砦に歴戦の兵を派遣し、国境地帯の警護に当たらせるようになった。これが王国騎士団の始まりである。

東西南北の4つの騎士団および首都を警護するレジランカ騎士団の5つから成る王国騎士団は言わずもがなリンデルワーグにとって国防の要である。

東西南北を走る2つの大街道が交差する首都レジランカは経済の要衝であり、華やかな流行が生まれる文化の源泉となる場所でもある。

王国騎士団のなかでもとりわけ首都を守るレジランカ騎士団は他の騎士団とは別格とされ、その団長となれば代々武勇に誉れ高く人格に優れている者が選出されてきたはずであるが……。

(腹が減ったなあ……)

……どうやら当代のレジランカ騎士団団長はそうでもないらしい。

ラルフは空腹と眠気に苛まれながら、書類仕事に忙殺されていたのだった。