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 焼けるほどの日が真上に登ってから3時間程度。15時頃の空はまだまだ明るいが、これ以上いると夕刻になってしまうとの事で私たちはゆっくり下山していた。
 あの後はある程度山頂付近まで登り、いろんな鳥たちを観察した。鳥たちにとっていい環境なのか、夏鳥とは呼べない鳥たちをちらほら見受けられたいた様子。十鳥先生が興味深そうにしていた。

「……」

 そんなこんなで楽しい時間はあっという間に過ぎていく。さっきまではテンションが高かったが、終わりも近づくと安心からか力が抜けてくる。同時に疲労感も襲ってきた。足は重く棒のようで、思うように歩けない。今歩いている山道が足取りの悪い、細く舗装されていない悪路なのもあるだろう。

「不知火さん、大丈夫?」
「う、うん」

 赤翼くんが往路の時と同じように優しく声をかけてくる。
 彼とははっきり仲直り出来ていない。なし崩し的に話せるようにはなったが、私としてはやっぱりきちんと謝りたい。悪い態度をとってしまったのも事実だし、なにより謝るという行為を蔑ろにしたくないという気持ちが強かった。

「あ、あの!」

 相変わらず十鳥先生と生駒くんは元気なようで、遥か先を先導して歩いている。今しかないと思い、声をかけた。

「な、なにかな?不知火さん」

 赤翼くんもどこか緊張している様子。私の緊張が空気越しに伝播したみたい。

「えっと…」

 いざ言おうとすると緊張する。なんて言葉から始めたらいいかわからない。
 いきなりごめんなさいでいいのか。何の話かから始めるべきか。彼がもう気にしてないなら謝らなくてもいいのか。
 思考がグルグルと頭が巡る。謝りたいと思えば思うほど雁字搦めになって動けなくなる。培ってこなかった友人関係、こんなにも難しいものなんだ。