「それに私が何を言おうと赤翼くんには関係ないでしょ?」

 彼女の語気が強くなる。

「関係なくないよ!僕は心配で──」

 それに僕も強く反応する。

「頼んでない。余計なお世話」
「友達として心配してるんだよ」
「友達?私と貴方はただの部活仲間でしかないじゃない」
「っ!」

 不知火さんにとって僕は友達じゃない。その言葉聞いた瞬間、頭をガンッと鈍器で叩かれたような感覚に襲われた。

「あっ…いや…」
「不知火さん、僕のことそんな風に思ってたんだね」
「…っ」

 頭に血が上っていく感覚がする。また深く考えず言葉が出た。

「不知火さんは不死鳥の血があるから?僕とは友達になれないってこと?」
「えっ」

 あっ…と思った時には遅かった。

「それ、今関係ないでしょ…」
「……」

 すぐに謝るべきだ。でも頭に血が上って言葉が思い浮かばない。2人して顔を俯かせた。

「ピ、ピィ?」

 ピィちゃんが悲しそうに鳴き、僕らを交互に見る。
 彼女はその鳴き声に動揺して目を泳がせた後、悲しそうな表情をして立ち上がった。

「し、不知火さん?」
「ごめん。今日は帰る」
「あっ…」
「帰る」

 鞄を持ち、彼女は背を向けて歩き始めた。その背はとても小さく見えた。

「不知火さん!」
「じゃあね」

 ガララッと引き戸が鳴き、ピシャッと不知火さんを視界から消した。

「ピィ…キュウッ」

 ピィちゃんが悲しく鳴く。
 そこで今更気づいた。僕は彼女に無責任なことを言ったんだと。不知火さんの話もちゃんと聞くべきだったと。僕は不知火さんが心配だっただけなのに。
 ぐにゃりと座っている椅子が宙に浮いているような感覚。ここにいるはずのに、ここにはいないみたいな感覚。

「…ごめん」

 遅すぎる言葉が口から洩れた。この気持ちをきちんと伝えたい。
 心配してただけだと。力になれるならなりたいんだと。僕は不知火さんの友達だから。
 頭の中で言葉を反芻し、ピィちゃんの頭を軽く撫でた。