「お、いたいた」

 そんな中、唐突に声とともにガララっと古びた引き戸を開く音が鳴る。

「っ!」
「…!!」

 僕らはビクッと身体を震わせた。まさか部長がここまで!?

「え、2人ともなにその反応」
「なんだ翔か。驚かさないでよ」
「驚かすってなんだよ。勝手にビビったのそっちじゃん」

 不服そうな声を出しながらも、幼馴染の生駒翔が静かに部室に入ってきた。

「……」

 その様子を見ながら、不知火さんは僕の後ろに隠れるかのようにほんの少しだけ席を移動させた。
 たぶん不死鳥とのハーフであるという秘密がバレてしまうのを嫌ったのだろう。不知火さん、この部室だと自然体でいられるように見えるし。


「…で、翔はなんでここに来たの?」

 不知火さんも不安がっているし、ピィちゃんも声を押し殺してる。それを察して早々に本題に切り込んだ。

「いや、有真があんなにはっちゃけるだもん。少しからかってやろうと思ってね」
「あいにく大人しくからかわれてる時間は僕らにはないんだよね。用がないなら帰ってくれない?」
「嘘だって!冗談冗談!3割冗談!…いや、4割!」

 結構冗談の割合大きいじゃないか。

「いやぁ違う違う。さっきも言ったけど校内放送を聞いて来てみたんだよ。ちょっと不思議だなって」
「不思議?」
「有真ってたとえ周りになんと言われても、例え1人でも生物と関わろうとする奴じゃん?はっきり言って社交性ゼロだし」
「い、いくら幼馴染でも言っていいことと悪いことあるよ!?」

 それじゃまるで社会不適合者みたいじゃないか。いや、間違ってないかもしれない。

「そんな有真がだよ?わざわざ放送室ジャックしてまで大々的に部員募集なんてさ」
「いや、それは…」
「そんだけ動くってことは生き物が後ろに絡んでるんだろ?違う?」
「なんで心読めるの?」
「だって昔からそうじゃんか。捨て犬とか野良猫とか放っておけない。どんだけ俺が付き合わされたと思ってんの?」

どうやら翔にはお見通しなようだった。