「不知火さんじゃない。どうしたの、こんなところに」
「あっ、え、えっと…」

 ぱちぱちと瞬きをして目を泳がせる。普段の学校生活では見ない慌てふためく姿は少し新鮮に思える。

「不知火さんと昨日、その鳥を保護したんです」
「あ、なるほど?」
「心配になって見に来てくれた…んだよね?」
「…うっ、うん」

 なんとなく僕が助け舟を出すと、不知火さんはしおらしく乗り込んできた。
 不死鳥という部分は当然ぼかした。絶対に誰にもばらさない。これは僕が決めた、不知火さんとの約束だ。

「ありがとうね、不知火さん」
「い、いえ…」
「…うーん、やっぱり朝見た時から変わってない。あんまり食べてないね」
「…あ」

 不知火さんに軽く挨拶をすると十鳥先生は鳥籠のもとへ行き、中を確認してそう呟く。一緒になって僕も覗くと、確かにご飯を食べた形跡は少ないようだった。

「一応、朝にご飯を入れ替えたんだけど口に合わないみたいだね…」
「元気、ないですもんね」
「鳥は種類にもよるけど基本的に体重管理をして食事するんだ。空を飛ぶ生き物だからね。体重が軽過ぎても重過ぎてもいけない」
「そ、そうなんですか?じゃあこの子は…」

 心配そうに声を出す不知火さん。無関心に見えてすごく心配してくれてる。優しい子なんだなと思った。

「うーん、半日以上何も食べないと餓死しちゃう子もいるけど、この子はある程度間を空けても大丈夫な種類みたい。私もネットとかでサッと調べたけど種類がわからなくてね」

 それはまぁ…不死鳥ですからね。調べて食性が出てきたら世紀の大発見がネットに転がってることになる。

「赤翼くんを呼んだのは、この子を責任もってお世話するか確認したかったって言うのと…」

 十鳥先生が僕ら2人を見る。少し悪戯そうなその表情。

「この子のご飯を用意してもらおう…と思ったけど、2人で保護したんだよね?」
「はい」
「…せっかくだし2人で用意してみない?生き物の面倒を見る、練習だと思って」
「僕はもちろん…」
「えっ、えぇ?」

 不知火さんが驚いた表情をする。世話するとは言ったものの、そこまでするとは思ってなかったみたいだ。

「後でお金はあげるからさ。放課後に近くのペットショップで食べ物を調達してきましょう!」
「…で、でも」
「この子のこと、助けたくないの?」
「うっ…」

 そう言われた不知火さんが鳥籠に目線を向ける。

「…ピィ」

 昨日より元気がなさそうに不死鳥の子が鳴いた。

「…わ、わかりました」

 助けたいという気持ちが僕と一緒にいる気持ちより勝ったみたい。…なんだか言ってて悲しくなる。

「ふふっ、2人ともよろしくね。あっ!何かあったらすぐに言うんだよ!助けられなかったら元も子もないからね!」

 そう言って十鳥先生は優しく笑った。