喉から出た叫びにも似た想い。また1つ、火の熱が喉を焼いて声をくぐもらせた。

「それができない人もいるけど!でも不知火さんは誰よりも命を見て同じ立場で痛がれる人だ!だから不知火さんは素敵な人なんだ!」

 焼ける手で彼女の頬に触れる。頬に生える紅の羽毛が柔らかなサラサラとした感触。不知火さんと肌を重ねているという事実に、炎熱で死にかけているくせに僕の胸はドキドキと高鳴っていた。

「キュウッ!キュウウ」

 彼女がふるふると首を振り鳴き声をあげる。

「不知火さん。命の不平等さから、僕ら人間が目を逸らしちゃダメだ」
「ピィ…」
「僕らは生きようよ。人間として一緒に。いろんな命に感謝したり悲しんだりしながら、僕らの胸に命をずっと留めてあげよう」

 あぁ、もう意識が…。朧気になりつつ言葉を紡ぐ。もう自分でも何を言ってるかわからない。火の熱で皮膚がどんどん焼ける。焼死寸前だった。

「そうやって命を想える心を不知火さんには大切にして欲しい。それができる君という人間のことを、どうか嫌わないで欲しい」
「ピ…」
「だって僕は、そんな不知火さんが──」

 あぁ…最期のセリフくらい、言いたかったな。焼ける喉が紡いだ言葉。その続きは出ず、不知火さんに力を失うように寄りかかった。
 炎が僕の思考も肉体も全て焼き尽くす。焼け爛れて、消えてなくなる。

『赤翼くん』

 最後を悟った瞬間、僕の名前が響いた。頭の中か実際の声かはわからない。でもそれはいつもの彼女の綺麗な声だった。

「……」

 おぼろげな意識の中で、一筋の青い涙が彼女の頬の深紅の羽毛を伝った。