命は平等じゃない。やっぱり人間は自分勝手だ。ならば何もかも燃やし尽くしてしまえ。そんな悲しい心の内を轟々とした炎から感じた。
 バサバサッと音を立てて翼になってしまった彼女の腕が羽ばたく。羽ばたきで生まれた風に焔が橙色に舞う。
 不知火さんの悲しみのように淡く儚く。不知火さんの怒りのように熱く激しく。

「命はっ…平等じゃない、かもしれないけど」

 炎の熱と羽ばたきもがく翼に耐えながら、彼女を抱きしめ精一杯声を絞り出す。熱を抱きながらも僕の心はそれ以上に熱い。

「僕は!不知火さんは素敵な人だと思う!」
「ピッ…!?」

 僕の一言で、胸の中に収まる彼女が炎を揺らしながら小さく反応する。炎による肉体変化は止まることはなく、そんな反応を見せた彼女はもう全体的な形が人間なだけであとはほぼ鳥類、という状態にまで進行していた。

「人がいたずらに命を奪うのはもってのほかだ!でも僕らだけじゃなくて、生き物はみんないろんな命を犠牲にした上で生きている」

 息を荒らげながら持論を続ける。

「でも僕らは!僕ら人間は──」

 熱でどうにかなりそうになりながらも意識を保ち、不知火さんの琥珀色の瞳を見つめる。潤んで揺れるその瞳。その瞳からはいつも僕らと一緒にいた不知火さんの面影がまだたくさん残っていた。

「失ってしまった命を想い、悲しみ、惜しむことができる。だから君は醜いだけじゃない」

 1番伝えたいことを彼女の目を見てまっすぐぶつけた。