「不知火さんっ!」

 僕は床にへたり込んだまま不知火さんを抱きしめた。
 不知火さんは人間だ。不死鳥の姿になんてさせるものか。今ここで人間を好きになってもらう。それしかなかった。

「ピッ!?キュウッ!」

 抱きしめた僕の体を炎が躍起になって燃やしていく。信じられないほど熱い。でも不知火さんはもっと熱くて苦しい!

「不知火さん、聞いて!人間は、醜いだけの存在じゃないんだよ」
「キュッ!キュウウウッ!」

 鳥類の鳴き声が響く。なんとなく彼女の発する声の意味がわかった。
 『嘘だ』と。『そんなわけない』と。

「本当だよ。あのね──」

 抱きしめた彼女の体の炎が当然僕も包み込む。

「…げほっ!」

 息を吸い、熱が喉を焼いてむせる。まるで喉が燃えているかのよう。
 怯んじゃダメだ。喉なんかいくらでも燃やしてやる。伝えられなきゃ僕は一生後悔する。

「たしかに命は、平等じゃないかもしれない」
「キュ!?ピィィ!」

 僕の言葉に『そうだろう?』と笑う悪魔のような業火。彼女の発する声も絶望を感じたような、驚きと気落ちした鳴き声。