かくりよには、永久の春がある。桜の花びらがはらはらと舞い落ちてゆくのを、華衣は縁側に座って見ていた。
「華衣、冷えないか?」
「うん、平気」
 やって来た浬烏にそう返事をすると、浬烏は彼女の隣に胡座をかいて座った。華衣は自然に、浬烏にもたれる。すると浬烏も自然に、彼女のお腹を優しく撫でた。
「だいぶ大きくなったな」
「うん。お母さんに聞いたら、あと二ヶ月くらいだって」
「そうか」
 言葉自体はそっけないのに、喜びを隠せていないその言い方に、華衣は浬烏の底しれぬ愛情を感じる。
桜烏(おうう)と名付けようか」
「いいね、それ!」
 顔を上げると、愛しき旦那様の優しい顔が間近にあった。華衣はそっと目を閉じる。すると、二人の唇同士が優しく触れ合った。
「華衣」
 不意に名を呼ばれ、華衣はそっと目を開いた。
「なに?」
「愛している」
 浬烏の瞳は、蕩けるほどに優しく華衣を愛でる。
「私もだよ、浬烏。愛してる」
 二人はたくさんの愛と喜びを胸に、再び口づけを交わし合う。永遠の桜吹雪の舞う中で、幸せが二人を包んでいた。

 〈終〉