バサバサという羽の音が聞こえたのは、それから暫くの後。蔵の上の通気口近くに黒い影が降り、華衣は見上げた。黒い烏が一羽、そこに止まっている。
「浬烏!」
華衣は彼だと確信し、名を呼んだ。烏の濡れ羽色の羽は、その先端だけが赤色に染まっていたのだ。
「華衣!」
烏は華衣の声を聞いた途端、天狗の姿になり、蔵の中へと舞い降りる。華衣は居ても立ってもいられず、愛しい人の元へ駆け寄った。
「私を呼んだな」
「はい!」
薄暗闇でも分かる、優しい微笑み。いつしか大好きになっていた、愛しい人の微笑みだ。
「華衣の父上、母上。これは一体……」
浬烏は父母に視線を向けた。
「せっかく華衣をこちら戻してくれたのに、私の姉が神の祟を恐れてここに我々を閉じ込めたんだ。申し訳ない」
「伯母上が」
浬烏はすぐに状況を察し、蔵の戸に手をかざした。バリン、という音がして、次いでガンガン、と金属音がする。それが止むと、カチャリと蔵の鍵が開いた音がして、まるで自動ドアのように蔵の扉が開いた。
「伯母上はどこだ!」
いち早く蔵から出た浬烏は、音を聞いて駆けてきた村人たちに問うた。その形相は鬼のようで、村人たちはたじろいだ。
「一体、なんの騒ぎよ!」
駆けつけた伯母は、浬烏を見るとひゅっと息を飲む。浬烏の鋭い視線が、伯母に向けられたのだ。
「浬烏!」
華衣は彼だと確信し、名を呼んだ。烏の濡れ羽色の羽は、その先端だけが赤色に染まっていたのだ。
「華衣!」
烏は華衣の声を聞いた途端、天狗の姿になり、蔵の中へと舞い降りる。華衣は居ても立ってもいられず、愛しい人の元へ駆け寄った。
「私を呼んだな」
「はい!」
薄暗闇でも分かる、優しい微笑み。いつしか大好きになっていた、愛しい人の微笑みだ。
「華衣の父上、母上。これは一体……」
浬烏は父母に視線を向けた。
「せっかく華衣をこちら戻してくれたのに、私の姉が神の祟を恐れてここに我々を閉じ込めたんだ。申し訳ない」
「伯母上が」
浬烏はすぐに状況を察し、蔵の戸に手をかざした。バリン、という音がして、次いでガンガン、と金属音がする。それが止むと、カチャリと蔵の鍵が開いた音がして、まるで自動ドアのように蔵の扉が開いた。
「伯母上はどこだ!」
いち早く蔵から出た浬烏は、音を聞いて駆けてきた村人たちに問うた。その形相は鬼のようで、村人たちはたじろいだ。
「一体、なんの騒ぎよ!」
駆けつけた伯母は、浬烏を見るとひゅっと息を飲む。浬烏の鋭い視線が、伯母に向けられたのだ。