「え……」
華衣は言葉に詰まってしまった。
「人の世は不便だ。ここにいれば、お前の欲しいものは何でも与えてやれる。そう、思っていたが――お前は、不満なんだよな」
「そう、ですね」
華衣はかくりよに来た頃のことを思い出した。
「今までの生活にあったものが、何もない。この場所に閉じ込められて、何もすることがない。かくりよって不便だなって」
「なんでも与えてやれるのに、か?」
「あなたはそうかもしれません。でも、私は自分で何もできないじゃないですか。あなたみたいに指をパチンってやっても、なにも出せない。ただこの場所で、じっとしてることしかできない。だから、不満でした。でも――」
「もう、よい」
浬烏に言葉を遮られ、華衣は黙った。同時に、言わなくて良かったと思った。この先を紡いでしまったら、彼に恋心が知れてしまう。あれだけ離婚したいと言っていたのに、今更何をと笑われてしまう。
「今日は、何を折るんだ?」
「じゃあ、桜の花を折りましょうか」
華衣は薄桃色の千代紙を手に取り、四角に折ってゆく。浬烏は黙ったまま、華衣の折り方を真似した。
華衣は言葉に詰まってしまった。
「人の世は不便だ。ここにいれば、お前の欲しいものは何でも与えてやれる。そう、思っていたが――お前は、不満なんだよな」
「そう、ですね」
華衣はかくりよに来た頃のことを思い出した。
「今までの生活にあったものが、何もない。この場所に閉じ込められて、何もすることがない。かくりよって不便だなって」
「なんでも与えてやれるのに、か?」
「あなたはそうかもしれません。でも、私は自分で何もできないじゃないですか。あなたみたいに指をパチンってやっても、なにも出せない。ただこの場所で、じっとしてることしかできない。だから、不満でした。でも――」
「もう、よい」
浬烏に言葉を遮られ、華衣は黙った。同時に、言わなくて良かったと思った。この先を紡いでしまったら、彼に恋心が知れてしまう。あれだけ離婚したいと言っていたのに、今更何をと笑われてしまう。
「今日は、何を折るんだ?」
「じゃあ、桜の花を折りましょうか」
華衣は薄桃色の千代紙を手に取り、四角に折ってゆく。浬烏は黙ったまま、華衣の折り方を真似した。