◇
「こうか?」
「違います、こうです」
「こうするのか?」
「だから、こっちは開いて――」
浬烏は驚くほど不器用だった。綺麗に折られた折り鶴を指パチンで出したのだから、さぞ上手に折れるだろうと思っていたのに。
華衣は始め、浬烏が自分の真似をしていることに気づいて、ゆっくりと折り鶴を折っていた。しかし、あまりにも浬烏が頓珍漢な方向に折るので、ついには手を止めて浬烏に教えることにしたのだ。
「あーだからそうじゃないって!」
裏面と同じことをするだけなのに、どうしてまた一から説明しなければならないのだろう。華衣は半ば呆れながらも、浬烏と共に折り鶴を折った。
やがて完成したのは、桃色の綺麗な折り鶴と、濡れ羽色の首を下げた皺々な鳥だった。
「なぜだ。……解せぬ」
華衣は浬烏のつぶやきに、思わずぷっと噴き出した。
「これは鶴っていうよりもカラスですね」
「何? 烏はこんなに皺は寄ってない」
「そこ!?」
なぜか浬烏はムっとする。華衣は浬烏のその顔が面白くて、肩を揺らして笑った。
「そもそも、烏というのはなぁ、」
浬烏は指をパチンと鳴らす。すると、そこに紙と筆が現れた。筆はひとりでに動き、紙に烏を描いてゆく。まるで図鑑にあるような、美しい一羽の烏が現れた。
「こういう鳥だ」
華衣は浬烏の折った濡れ羽色の《塊》と絵を見比べる。確かに、烏はもっと首が短く、嘴も太い。だが、皺に関しては分からなかった。それでも自信たっぷりに「これだ」という浬烏が、華衣はおかしくて仕方ない。
「ふふ、くふふ」
お腹を抱え、肩をひたすらに揺らす。
「なにがそんなにおかしい」
「だって、カラス……ふふっ」
すると浬烏はまた指をパチンと鳴らす。華衣の前に、まっさらな紙と墨のついた筆が現れた。
「ならば、華衣も烏を描いてみろ」
華衣はぎょっとした。絵は勘弁してほしい。
「まさか、こんなに笑っておいて描けぬというのか?」
子どものようにムッとする浬烏に、華衣は仕方なく筆を手に取った。紙に筆を滑らせる。が、しかし――。
「こうか?」
「違います、こうです」
「こうするのか?」
「だから、こっちは開いて――」
浬烏は驚くほど不器用だった。綺麗に折られた折り鶴を指パチンで出したのだから、さぞ上手に折れるだろうと思っていたのに。
華衣は始め、浬烏が自分の真似をしていることに気づいて、ゆっくりと折り鶴を折っていた。しかし、あまりにも浬烏が頓珍漢な方向に折るので、ついには手を止めて浬烏に教えることにしたのだ。
「あーだからそうじゃないって!」
裏面と同じことをするだけなのに、どうしてまた一から説明しなければならないのだろう。華衣は半ば呆れながらも、浬烏と共に折り鶴を折った。
やがて完成したのは、桃色の綺麗な折り鶴と、濡れ羽色の首を下げた皺々な鳥だった。
「なぜだ。……解せぬ」
華衣は浬烏のつぶやきに、思わずぷっと噴き出した。
「これは鶴っていうよりもカラスですね」
「何? 烏はこんなに皺は寄ってない」
「そこ!?」
なぜか浬烏はムっとする。華衣は浬烏のその顔が面白くて、肩を揺らして笑った。
「そもそも、烏というのはなぁ、」
浬烏は指をパチンと鳴らす。すると、そこに紙と筆が現れた。筆はひとりでに動き、紙に烏を描いてゆく。まるで図鑑にあるような、美しい一羽の烏が現れた。
「こういう鳥だ」
華衣は浬烏の折った濡れ羽色の《塊》と絵を見比べる。確かに、烏はもっと首が短く、嘴も太い。だが、皺に関しては分からなかった。それでも自信たっぷりに「これだ」という浬烏が、華衣はおかしくて仕方ない。
「ふふ、くふふ」
お腹を抱え、肩をひたすらに揺らす。
「なにがそんなにおかしい」
「だって、カラス……ふふっ」
すると浬烏はまた指をパチンと鳴らす。華衣の前に、まっさらな紙と墨のついた筆が現れた。
「ならば、華衣も烏を描いてみろ」
華衣はぎょっとした。絵は勘弁してほしい。
「まさか、こんなに笑っておいて描けぬというのか?」
子どものようにムッとする浬烏に、華衣は仕方なく筆を手に取った。紙に筆を滑らせる。が、しかし――。