「 烏天狗は何でも出せる。困るようなことは無いと思うが、君は私に助けを求めたと。いうことは、何か困り事があるということだ」
「あ、あの!」
 華衣は思い切って口を開いた。
「昨夜、私突然ここに連れてこられて、子を成せって言われて、ここで浬烏さんに、その――」
 華衣は言葉に迷い、黙ってしまったが、浬烏の父はそれで全てを悟った。
「とんだ非礼を。父親として、詫びさせて欲しい」
 浬烏の父は突然華衣の前に膝をつき、頭をつき、深く頭を下げた。
「あの、いえ、別に! 少し触れられただけで、それ以上は無かったので!」
「だが、君は傷付いた。だろう?」
「ええ、まぁ……」
 浬烏の父は頭を上げ、華衣の顔を覗いた。全てを見抜こうとするような瞳に居心地が悪くなり、華衣は視線を部屋の中へ泳がせた。
「華衣さん、倅は少しばかり不器用に育ってしまった。私のせいだな」
 浬烏の父はそう言うと、「昔話をしていいだろうか」と華衣に問うた。特にやることも無かったので、華衣はコクリと頷く。それに一度微笑んで、浬烏の父は足を崩して座り直した。