華衣はすぐに、外へ出ようと試みた。が、襖戸はまるで接着剤でくっついているかのようにびくともしない。窓からなら出られるかもしれない、と、華衣は丸窓の向こうへ手を伸ばした。けれど、見えないガラスでもはまっているかのように、華衣の手は窓の向こう側へ行くことはなかった。
閉じ込められている。
そのことに気づきながらも、華衣は窓の外をじっと眺めた。青と白が混じったような空の下、向かいにはこの屋敷の続きの縁側がある。その間は中庭になっていて、小石と岩が見事な枯山水を描き、中央には一本桜の木が立っている。立派な木の枝には満開の桜が咲いていて、幾つもの桜吹雪を作っていた。
――きれい。
華衣はしばらく魅入っていた。けれどふと、お腹の虫が騒ぎ出す。どうやら空腹は誤魔化せないらしい。
あれから暫く経つというのに、まだ湯気を立てる和食の前に華衣は座った。
白いご飯にわかめのおつゆ。焼き鮭に漬物、しらすと青菜の和え物。食べてみたらどれも絶品で、華衣はあっという間に平らげてしまった。
――こんなはずじゃなかったのに。
華衣の心は不思議と凪いでいた。温かな朝食、きれいな景色、お祖母ちゃん家のような居心地。あの人は人の心など全く分かっていないようなのに、なぜこんな気持ちになるのか、華衣は不思議でならなかった。
閉じ込められている。
そのことに気づきながらも、華衣は窓の外をじっと眺めた。青と白が混じったような空の下、向かいにはこの屋敷の続きの縁側がある。その間は中庭になっていて、小石と岩が見事な枯山水を描き、中央には一本桜の木が立っている。立派な木の枝には満開の桜が咲いていて、幾つもの桜吹雪を作っていた。
――きれい。
華衣はしばらく魅入っていた。けれどふと、お腹の虫が騒ぎ出す。どうやら空腹は誤魔化せないらしい。
あれから暫く経つというのに、まだ湯気を立てる和食の前に華衣は座った。
白いご飯にわかめのおつゆ。焼き鮭に漬物、しらすと青菜の和え物。食べてみたらどれも絶品で、華衣はあっという間に平らげてしまった。
――こんなはずじゃなかったのに。
華衣の心は不思議と凪いでいた。温かな朝食、きれいな景色、お祖母ちゃん家のような居心地。あの人は人の心など全く分かっていないようなのに、なぜこんな気持ちになるのか、華衣は不思議でならなかった。