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006_迷子の弾路君
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「参ったな」
弾路は迷子になっていた。
森は弾路の想像以上に深く、そろそろ夜の帳が落ちそうだ。
「野宿か……」
魔物の生息する森の中で野宿はしたくなかったが、こればかりは受け入れるしかない。
インドア派の弾路はキャンプなどしたことない。
焚火用の薪を集めようと周囲を見たが、枯れ枝や枯れ葉は落ちてなさそうだ。
【異世界通販】から炭と着火剤、それとブロックを購入した。
ブロックをコの字に置き、その中で火を熾す。
【食料】の画面には米や小麦粉などの穀物、塩や胡椒などの調味料がある。
「あ、弁当もあるのか」
幕ノ内弁当と唐揚げ弁当、焼き肉弁当の三種類しかないが、弁当もあった。
焼き肉弁当とインスタントみそ汁を購入する。
ヤカンとミネラルウォーターも購入し、焚火でお湯を沸かしてインスタントみそ汁を作った。
「魔物も売れるから、めちゃくちゃ助かったよ」
頭が二つあるネコの魔物は、ツインヘッドレオパルドという種族名だった。【異世界通販】で【売却】する時に、種族名が出てくれる。
「しかもツインヘッドレオパルドが一〇〇万円で売れたから、めっちゃ嬉しいし」
他にも十体程の魔物を倒したが、どれも一〇〇万円から数百万円で売却することが出来た。おかげで【異世界通販】に入っている金額は軽く二〇〇〇万円円を超えている。
焼き肉弁当やみそ汁の使用後の容器を【ダストボックス】に捨てる。どこに消えるのか分からないが、森を汚さなくて済む。
「さて、寝るべきか」
いきなり召喚されて、殺されかけた。じくじくと傷痕が痛み、精神力と体力を削っている。さらに慣れない森歩きや魔物との戦闘で疲れがある。
徹夜は慣れているか、森がどれほど広いか分からない。
今夜くらいはなんとかなるが、明日も徹夜となると厳しい。
「よし、感知装置を作るか!」
感知装置と言っても、簡単なものだ。
タコ糸に鈴をつけて張り巡らすだけである。
外套を買ってそれに包まり、焚火の前で眠りにつく。
深く寝入ってはいけないと思いながら、疲れが溜まっていた弾路は深い眠りについた。
チリンチリンッ。チリンチリンッ。チリンチリンッ。
「っ!?」
鈴の音を聞き、弾路は飛び起きた。
焚火は小さくなっているが、まだ点いている。その小さな火の明かりを頼りに鈴の音が鳴ったほうを凝視すると、ノッソノッソとカメが現れた。
「デ、デカい」
二階建ての家くらい大きい。
見上げる弾路を前にして、巨大なカメは鼻をスンスンさせている。
(僕が作ったダイナマイトで倒せるのか?)
弾路は後ずさった。
さすがにこの大きさのカメに勝てるビジョンが浮かんで来ない。
だが、カメは弾路に目もくれずに、巨木の枝葉を食べ始めた。
「そ、草食の魔物……なのか?」
カメはムシャムシャと枝葉を夢中で食べている。
弾路は下手に手を出すより、逃げることを選択した。
逃げ出してすぐに空が白み始めた。
弾路は白み始めた空に誓う。生き延びてやると。
・
・
・
「僕はやったぞーっ!」
三日かけて森を抜けることができた弾路は叫んだ。
酷く汚れた弾路は、「わーっ」と叫び続けた。無意味に叫ぶほど嬉しかったのだ。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+
懐瑠弾路(三〇)
クラス 【弾丸の勇者(四九)】
スキル 【弾丸創造(一)】【異世界通販(一)】
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+
森の中で魔物と壮絶な戦いを繰り広げたことから、弾路のレベルは上がっていた。
ただ、スキルの【弾丸創造】【異世界通販】は共にレベル一のままで、創れる弾丸も買える異世界の品々も増えていない。
それでも簡易ダイナマイトのおかげで、弾路は森を抜けることができた。
レベルが上がったことから、森歩きはそこまで苦にならなかった。
ただし道なき森を彷徨っていたことから、精神的な疲れは否めない。
森から少し離れたところに、街道を発見した。街道があるということは、町か村があると思われる。弾路は街道を進んだ。
「ふんふっふっふふん♪」
人が居る場所に行けると思うと、自然と鼻歌が出る。
後方から何か音が聞こえてきた。振り返ると、一〇人の騎士に守られた馬車がやって来る。
騎士を見ると、嫌なことを思い出す。弾路は外套のフードを深く被って、道の端に寄ってその一行をやり過ごすことにした。
騎士たちから鋭い視線を向けられたが、特に何もなくその一行をやり過ごせた。
そろそろ昼だから弁当のことを考えながら街道を進む。
「昨日の昼は幕ノ内弁当だったし夜は唐揚げ弁当だったから、今日の昼は焼き肉弁当にしようかな。それともお手軽に菓子パンにしようかな~」
朝はカロリーゼリーを食べているが、昼と夜は固形物が食べたい。弁当は三種類しかないから、どうしても順繰りに食べることになる。そこに菓子パンを入れれば多少はバリエーションが増える。
腰掛けるのに丁度良い石があったから、弾路は休憩することにした。
ソーセージが入った菓子パンを購入して、ムシャムシャ食べる。菓子パンの相棒は炭酸飲料だ。
「ップハーッ! 糖分が体中に染みわたる~」
食事が終わるとタバコに火を点け、肺一杯に吸い込んでふーっと煙を吐く。
嬉しいことに、【異世界通販】でタバコが買える。異世界でも日本のタバコが買えるのだ、とても嬉しい。
「さて、行くか! 今日中に町か村に到着できると嬉しいな」
外套のフードを目深に被り直し、弾路は街道を歩きだした。
006_迷子の弾路君
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「参ったな」
弾路は迷子になっていた。
森は弾路の想像以上に深く、そろそろ夜の帳が落ちそうだ。
「野宿か……」
魔物の生息する森の中で野宿はしたくなかったが、こればかりは受け入れるしかない。
インドア派の弾路はキャンプなどしたことない。
焚火用の薪を集めようと周囲を見たが、枯れ枝や枯れ葉は落ちてなさそうだ。
【異世界通販】から炭と着火剤、それとブロックを購入した。
ブロックをコの字に置き、その中で火を熾す。
【食料】の画面には米や小麦粉などの穀物、塩や胡椒などの調味料がある。
「あ、弁当もあるのか」
幕ノ内弁当と唐揚げ弁当、焼き肉弁当の三種類しかないが、弁当もあった。
焼き肉弁当とインスタントみそ汁を購入する。
ヤカンとミネラルウォーターも購入し、焚火でお湯を沸かしてインスタントみそ汁を作った。
「魔物も売れるから、めちゃくちゃ助かったよ」
頭が二つあるネコの魔物は、ツインヘッドレオパルドという種族名だった。【異世界通販】で【売却】する時に、種族名が出てくれる。
「しかもツインヘッドレオパルドが一〇〇万円で売れたから、めっちゃ嬉しいし」
他にも十体程の魔物を倒したが、どれも一〇〇万円から数百万円で売却することが出来た。おかげで【異世界通販】に入っている金額は軽く二〇〇〇万円円を超えている。
焼き肉弁当やみそ汁の使用後の容器を【ダストボックス】に捨てる。どこに消えるのか分からないが、森を汚さなくて済む。
「さて、寝るべきか」
いきなり召喚されて、殺されかけた。じくじくと傷痕が痛み、精神力と体力を削っている。さらに慣れない森歩きや魔物との戦闘で疲れがある。
徹夜は慣れているか、森がどれほど広いか分からない。
今夜くらいはなんとかなるが、明日も徹夜となると厳しい。
「よし、感知装置を作るか!」
感知装置と言っても、簡単なものだ。
タコ糸に鈴をつけて張り巡らすだけである。
外套を買ってそれに包まり、焚火の前で眠りにつく。
深く寝入ってはいけないと思いながら、疲れが溜まっていた弾路は深い眠りについた。
チリンチリンッ。チリンチリンッ。チリンチリンッ。
「っ!?」
鈴の音を聞き、弾路は飛び起きた。
焚火は小さくなっているが、まだ点いている。その小さな火の明かりを頼りに鈴の音が鳴ったほうを凝視すると、ノッソノッソとカメが現れた。
「デ、デカい」
二階建ての家くらい大きい。
見上げる弾路を前にして、巨大なカメは鼻をスンスンさせている。
(僕が作ったダイナマイトで倒せるのか?)
弾路は後ずさった。
さすがにこの大きさのカメに勝てるビジョンが浮かんで来ない。
だが、カメは弾路に目もくれずに、巨木の枝葉を食べ始めた。
「そ、草食の魔物……なのか?」
カメはムシャムシャと枝葉を夢中で食べている。
弾路は下手に手を出すより、逃げることを選択した。
逃げ出してすぐに空が白み始めた。
弾路は白み始めた空に誓う。生き延びてやると。
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「僕はやったぞーっ!」
三日かけて森を抜けることができた弾路は叫んだ。
酷く汚れた弾路は、「わーっ」と叫び続けた。無意味に叫ぶほど嬉しかったのだ。
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懐瑠弾路(三〇)
クラス 【弾丸の勇者(四九)】
スキル 【弾丸創造(一)】【異世界通販(一)】
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森の中で魔物と壮絶な戦いを繰り広げたことから、弾路のレベルは上がっていた。
ただ、スキルの【弾丸創造】【異世界通販】は共にレベル一のままで、創れる弾丸も買える異世界の品々も増えていない。
それでも簡易ダイナマイトのおかげで、弾路は森を抜けることができた。
レベルが上がったことから、森歩きはそこまで苦にならなかった。
ただし道なき森を彷徨っていたことから、精神的な疲れは否めない。
森から少し離れたところに、街道を発見した。街道があるということは、町か村があると思われる。弾路は街道を進んだ。
「ふんふっふっふふん♪」
人が居る場所に行けると思うと、自然と鼻歌が出る。
後方から何か音が聞こえてきた。振り返ると、一〇人の騎士に守られた馬車がやって来る。
騎士を見ると、嫌なことを思い出す。弾路は外套のフードを深く被って、道の端に寄ってその一行をやり過ごすことにした。
騎士たちから鋭い視線を向けられたが、特に何もなくその一行をやり過ごせた。
そろそろ昼だから弁当のことを考えながら街道を進む。
「昨日の昼は幕ノ内弁当だったし夜は唐揚げ弁当だったから、今日の昼は焼き肉弁当にしようかな。それともお手軽に菓子パンにしようかな~」
朝はカロリーゼリーを食べているが、昼と夜は固形物が食べたい。弁当は三種類しかないから、どうしても順繰りに食べることになる。そこに菓子パンを入れれば多少はバリエーションが増える。
腰掛けるのに丁度良い石があったから、弾路は休憩することにした。
ソーセージが入った菓子パンを購入して、ムシャムシャ食べる。菓子パンの相棒は炭酸飲料だ。
「ップハーッ! 糖分が体中に染みわたる~」
食事が終わるとタバコに火を点け、肺一杯に吸い込んでふーっと煙を吐く。
嬉しいことに、【異世界通販】でタバコが買える。異世界でも日本のタバコが買えるのだ、とても嬉しい。
「さて、行くか! 今日中に町か村に到着できると嬉しいな」
外套のフードを目深に被り直し、弾路は街道を歩きだした。