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 005_創意工夫すれば戦えるんだ
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【異世界通販】は地球の製品を購入できるスキルだった。
 財布を取り出した弾路は、そこから五万六千円を手に取った。召喚前にコンビニでお金を下ろしていたから、そこそこの金額があった。
(【入金】だ)
 手に持っていたお札が消える。
【異世界通販】の画面下に表示されている金額が増えた。表示金額は円である。

「レベルが低いと購入できるものが限られているのか」
【購入】画面には【食料】【衣類】【雑貨】のアイコンしかなかった。
「銃は買えないか」
 それでも食料に困らないのはありがたい。
 コンビニで購入したものは、【ストック】に入れておく。

「あのサマンサが居る城のそばは危険だ。まずはあの女から距離を取らないと」
 この森がどこか分からないが、騎士たちが立ち去った方向と逆に進むことにした。
「問題はこの森の奥へ向かったら、安全なのかということだよな」
 離れることでサマンサの脅威は減るが、もしかしたら魔物が居るかもしれない。
 弾路はこの世界のことどころか、この森のことさえまったく知らないのだ。

「なんとか戦えるものを見つけないと」
 弾路は【雑貨】画面を見る。
 アイテムの写真があって、その下に品名と価格が表示されている。それが横五列、縦はかなり多くの段になっている。
 そんな中にエタノールを見つけた弾路は、迷うことなく購入した。樹脂ボトルに入ったものだ。
 蓋をて取って傷痕にかける。
「ぐっ!」
 痛みに顔を歪めるが、発射薬で焼いた時の痛みに比べれば大したことではない。

 テーピングとガーゼも雑貨として購入できた。傷痕にガーゼを当て、テーピングで固定する。
「必ず復讐してやるからな……」
 痛みに歪んだ顔で、サマンサへの復讐を口にして自分自身を鼓舞する。そうしないと、弱い自分が顔を出してしまう。

 さらに購入したTシャツに着替え、パーカーを羽織る。
「これで服は良し」
 だが、戦う準備ができたわけではない。
 再び【異世界通販】の画面をスクロールしていく。

「お、これは使えるな。これも……こいつもだ」
 細めの塩ビ管、塩ビ管用の蓋、塩ビ管用ボンド、小さ目の釘、ストロー、マッチ、ノコギリ、ペンチ、キリ、ロート、紙皿を購入。

 ノコギリで塩ビ管を三〇センチ程に切り分けていく。
 切った塩ビ管の片側に塩ビ管用ボンドで蓋を接着する。
 さらに接着してない蓋に、キリで穴を開ける。

 マッチの可燃部(塩素酸カリウムと赤リンの混合物)をペンチで崩して、紙皿の上に溜めていく。
 ペンチの先を押し当て、可燃部を細かく砕いておく。

 ストローをペンチで掴み、少しだけ先を出す。
 その先をジッポの火であぶると溶けてくっついた。
 先程作ったマッチの粉をロートに通してストローに積めて、満タンになったらペンチで挟んでジッポであぶって穴を塞ぐ。
 この時にマッチの粉に引火しないように気をつけないといけない。

 先程穴を開けた蓋に、マッチの粉が入ったストローを差し込んで塩ビ管用ボンドで抜けないように接着する。

 次はスキル【弾丸創造】で弾丸を創造する。多くの弾丸を創造していく。
 弾頭部を外して、発射薬を塩ビ管の中に詰めていく。どんどん詰めるが、その時に釘も入れておく。
 発射薬が満タンになったら、ストロー付きの蓋を接着する。

「出来た!」
 簡易ダイナマイトが出来上がった。
「創意工夫すれば、このくらいは作れるんだぜ」
 弾路は簡易ダイナマイトを一〇本作た。
 二本はベルトに差し込み、残りの八本は【異世界通販】の【ストック】に入れておく。
 さらに【異世界通販】で両手持ちのハンマーを購入し、【ストック】に入れておく。
 刃物は果物ナイフくらいしかなかったから、ハンマーを購入した。
「せめて鉈とか欲しかったな」

【ストック】に入れておいた菓子パンで腹を満たし炭酸飲料で喉を潤した弾路は、森の奥へと足を進めた。

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 三〇分程歩いたところで、懸念していたことが現実になった。
「「ガルゥゥゥッ」」
 二つの顔を持つネコが現れた。ただし、そのネコはとても大きく、体高が弾路の背丈ほどもあった。
 赤茶色に黒の斑模様のある毛をしたそのネコは、明らかに弾路を敵と認識している。

「僕だって、戦えるんだ!」
 弾路は簡易ダイナマイトのストロー(導火線)に火をつける。
 マッチの粉が激しく燃えてストローがどんどん短くなっていく。

「はっ!」
 簡易ダイナマイトをネコに投げつけると、なんとネコがそれを口で受け取った。
 こんなもので俺が倒せるかと、ネコの四つの目が言っているように見えた。
「僕をバカにしていると、痛い目を見るぞ!」
 その瞬間、簡易ダイナマイトが爆発した。
 その爆風が弾路にも届くが、弾路は爆発した瞬間に地面に伏せていた。

 爆風が収まると、ネコは地面に横たわっていた。
 簡易ダイナマイトを咥えていた頭は完全に消滅し、もう一つの頭も半分ほどがなくなっている。
 唯一残っている一つの目が、力なく弾路を見る。

「悪いけど、僕はまだ死にたくないんだ」
【ストック】からハンマーを取り出して振りかぶる。
「成仏してくれ」
 半壊している頭部にハンマーを振り下ろすと、ネコの体が激しく痙攣する。
 さらにハンマーを振り下ろし、三度目でネコの痙攣と呼吸が止まった。

「早く銃が欲しい」
 ハンマーのヘッドに付着したネコの肉片をタオルで拭き取りながら呟いた。
 この世界の工業レベルがどれほどか分からないが、銃を作ってもらえるような鍛冶師が居ると助かる。
【異世界通販】のレベルが上がれば銃が解禁されるかもしれないが、通販で銃が売られるだろうかと疑問に思ってしまう。