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 030_死の森合同作戦(九)
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 弾路はマガジンを外した。まだ弾丸が残っているものだ。【ストック】から新しいマガジンを取り出して、それをセット。
 照星と照門を合わせ、調整する。
(当たれよ)
 ダンッ。
 弾丸が一瞬でマッハを超えて、飛翔する。
 発射音と肩への衝撃を感じると同時に、エルダートレントに命中した弾丸が激しく爆発した。
 硝煙の臭いを感じ、ボルトを操作し薬莢を排出していると爆風が弾路たちのところにも届く。それはそよ風くらいのものだが、エルダートレントは顔付近に大きな穴が空いて向こう側が見えた。

 バキバキッズドンッと音を響かせてエルダートレントが倒れる。
 今のは爆発の属性を付与した弾丸だ。命中したら爆発で追加のダメージを与えるものである。

(何、あれ? 二発でエルダートレントを倒すだけでも凄いのに、一発で……)
 イリアはあまりの光景に、声を失う。
 だが、エルダートレントはまだ五体もいる。それらのエルダートレントは攻撃しているのが弾路だと分かったのか、真っすぐ進んで来る。
 エルダートレントの動きは遅いが、それでも二〇〇メートルなら二分もあれば到達する。しかも、攻撃が届くのは一〇〇メートルだ。つまり時間は一分しかないということだ。それまでに倒さなければ、反撃される。

 引金を引く。エルダートレントに命中する前に、何か見えないものに阻まれて爆発した。見えない何かを破壊したが、与えたダメージはかなり少ない。
(何あれ? AT●ィールドなの!?)
 弾路が驚愕の表情をする。
「魔力障壁……」
 イーサンが呟いたように、エルダートレントが魔力で障壁を展開したのだ。
 現在の弾路が強化できる最大の貫通力を付与した弾丸は、魔力障壁を貫通してエルダートレントに命中し爆発した。弾丸が命中したダメージは少ないが、爆発の威力によってエルダートレントの幹が抉れた。

(AT●ィールド……つまりエルダートレントは他者を拒絶する者!)
 わけの分からないことを考えているように思われがちの弾路だが、真面目に考えているのだ。
 弾路は【ストック】から新しいマガジンを取り出した。それには弾丸は込められていない。
(【弾丸創造】! 僕に力を!)
 手の平の上に五・五六×四五ミリ NATO弾が現れた。
 その一発をマガジンに込め、狙撃銃にセットする。

(AT●ィールドを抜いてやる!)
 ダンッ。その弾丸は魔力障壁に命中し、魔力障壁に光の波紋ができる。
 スパンッ。ドカンッ。弾丸は魔力障壁を貫通して、エルダートレントの顔に命中。爆発してその顔を深々と抉った。
 エルダートレントはその場で止まり、ピクリともしなくなった。
 貫通爆破弾。現在のダンジが創れる最高の弾丸になる。

「やったぞ!」
 イスバハン子爵が思わず声を漏らすほど、歓喜している。
 SSランクのエルダートレントを、一分もかからずに三体も討伐したのだ。SSランク冒険者でも一人でこのようなことはできない。
(このダンジという人物、いったい何者なんだ? SSランクのエルダートレントをこうもあっさりと……信じられない光景だ。だが、イリア様に力を貸してもらえるなら、これほど心強い人物はいない)

 魔力障壁を貫通してエルダートレントに着弾してから爆発したのを見た弾路は、同じ弾丸を創ってマガジンに込めた。
「貫け! 僕の心の弾丸よ!」
 中二病全開。遅れて来た思春期のように臭い言葉を吐いた。

 ダンッ、カチャ。
 ダンッ、カチャ。
 ダンッ、カチャ。
 ダンッ、カチャ。
 四連射。

 それらの弾丸はエルダートレントの魔力障壁を貫通し、その顔を爆発で破壊する。それだけでエルダートレントは動きを止めた。
 イスバハン子爵は開いた口が塞がらない。
「四体を一瞬で……。イリア様、相談役殿はいったい……」
「ダンジはダンジだ。私の友であり相談役だ」
「は、はい……」
「ダンジ。よくやってくれた。ダンジのおかげで多くの者の命が助かった。感謝する」
(なんて格好いい姿なの!? 本当に惚れてしまいそうだわ!)

「僕とイリアは友達だから、これくらい当然だよ」
「そ、そうだな(ッポ)」
 イリアの顔が真っ赤に染まる。
(お嬢様! 今こそその胸に飛び込むチャンスですぞ!)
 ビンセントの心の中の応援空しく、イリアは体をクネクネするだけで弾路の胸に飛び込むことはない。

「「「わぁぁぁっ!」」」
「「「エルダートレントを倒したぞ!?」」」
「「「信じられない!?」」」」
 冒険者と兵士たちが大歓声をあげた。
「うわっ!?」
 歓声のあまりの大きさに、弾路の肩が跳ねた。
(び、ビックリした。いきなり何?)

「皆がダンジを称えているのだ。手を振ってやったらどうだ」
「え、冗談でしょ?」
「冗談なものか。ほら、手を振ってやれ」
 イリアが手を振り、それをマネて弾路がおずおずと手を振る。
「「「わぁぁぁっ! 公爵閣下万歳! ダンジ様万歳!」」」
「「「ガルバー公爵家万歳!」」」

(僕がこの歓声を……。やって良かった。こんなに喜んでもらえて、良かった!)
 弾路は感動の余り、目に涙を浮かべる。
「皆の者! 英雄ダンジに拍手を!」
「「「わぁぁぁっ!」」」
 パチパチパチパチパチパチパチと盛大な拍手が弾路に贈られる。
「ほらもっと派手に手を振って」
「イリア……後からO・HA・NA・SHIな」
「えぇぇぇ……」
 イリアに乗せられた冒険者と兵士たちに、弾路は両手を思いっきり振って応えた。