+・+・+・+・+・+
002_元の世界には帰れない
+・+・+・+・+・+
「私はゴルディア国の第一王女で、サマンサと申します。勇者様方を心から歓迎します」
サマンサは両手でスカートを摘み、弾路たちに一礼した。それがとても可愛らしい所作だったから、高校生の三人はポカンと見入ってしまった。
「お、俺たちはどうなったんだ?」
短髪赤毛、背丈は一八五センチで逞しい体躯をした少年。
「ここはどこで、俺たちをどうするんだ?」
青毛のセミロング、細く見えるが筋肉質で一八一センチの少年。
「説明を求める」
金髪ロングをポニーテールにし、背丈は一七八センチ。弾路より少し背が高い少年。
高校生の三人が積極的に話しかける中、弾路は一歩引いて口を閉じていた。前に出る性格ではないのと、この状況に困惑しているからだ。
「詳しい話は私の父でこの国の国王が行います。こちらにお越しください」
サマンサの後を、騎士たちに囲まれて四人は王の元へと向かう。
(あの姫様の目は怖い……。信じてはいけない目だ)
高校生たちは姫様の可愛さに魅了されているが、弾路だけは姫様を怖いと思っている。
王の間。玉座に座る王は、端正な顔立ちをした髭を蓄えた壮年の人物だ。その両脇にはサマンサに負けず劣らずの二人の美少女が立っている。
さらに鎧の騎士たち、貴族のような人物たちも居る。
「お父様。勇者様方をお連れいたしました」
「うむ。よくやったぞ、サマンサよ。そして、よくぞ来てくれた、勇者たちよ。ワシはそなたらを歓迎する」
大層な歓迎ぶりだ。
「なあ、王様。俺たちはどうなるんだ? 元の世界に帰れるのか?」
赤毛の少年が聞く。とても国王に喋りかける口調ではない。
(国王に向かって、よくあんな言葉遣いができるね。僕ではとても無理だよ)
その尊大さが羨ましくもある弾路だが、できたとしてもやろうとは思わない。
「すまぬが、元の世界に戻す手段はない」
「「「なんだって!?」」」」
高校生たちは元の世界に戻れないと聞いて、剣呑な雰囲気になる。
「落ちついてください。勇者様方」
サマンサが三人にうるうるした目を向けると、三人はバツが悪そうにした。
「元の世界には帰せないが、勇者には貴族に準じた待遇を約束する。魔王を倒した暁には、高位の貴族に叙することも約束する」
国王から貴族という言葉を聞き、三人が顔を見合う。そして、ニヤリと笑い合った。貴族になれば、いい暮らしができる。それ以上に魔王は強いはずだと三人は考えた。
「魔王ってのを倒したら、本当に貴族にしてくれるんだろうな?」
「もちろんだ。だが、魔王は魔族と魔物を統べていて、非常に強大だ」
(僕たちは魔王と戦わされるのか。ライトノベルと同じ展開だけど、僕は怖いのは嫌なんだけど)
弾路は魔王と聞いて、背筋に冷や汗が流れた。好戦的な性格ではないから、戦いに身を置く自分が想像できない。
「ん、勇者は三人ではないのか? サマンサよ、どういうことだ?」
「おそらくですが、三人は勇者様で、一人は巻き込まれた者だと思われます」
国王の疑問にサマンサが答えると、国王は顎に手をやって少し考えた。
「巻き込まれた者には悪いことをした。勇者と同じ待遇には出来ぬが、暮らしが立ちゆくようにさせてもらう」
(あの国王様からは嫌な感じは受けない。もしかしたら姫様のことは僕の勘違いなのかもしれない)
「ところで、誰が勇者で誰が巻き込まれた者なのだ?」
「これから確認いたします。勇者様方、『ステータス・オープン』と念じてみてください」
この世界では自分のステータスが見えると、サマンサは言う。
「「「おおおっ! 見えたぞ!」」」
高校生たちはステータスが見えたと言う。
弾路も『ステータス・オープン』と念じると、自分のステータスが目の前に浮かび上がった。
「まるでゲーム画面のようだな」
赤毛の少年がそう言うと、他の二人も同意した。
(確かにゲーム画面のようだ。それと他人のステータス画面は見えないんだね)
「では、あなた様からお名前とクラスを教えてください」
サマンサが赤毛の少年を指名する。
「俺の名前は御剣勇也。クラスは【剣の勇者】だ」
「「「おおおっ!」」」
「ユウヤ様が【剣の勇者】ですね!」
サマンサが胸の前で手を合わせて喜んだ。
「次はあなた様の名前とクラスを教えてください」
今度は青毛の少年を指名した。
「俺は谷川槍次だ。クラスは【槍の勇者】だぞ」
「「「おおおっ!」」」
「ソウジ様は【槍の勇者】ですか!」
サマンサは目をキラキラさせた。
「今度はあなた様の名前とクラスを教えてください」
金髪の少年を指名した。
「俺か? 俺は木葉弘。クラスは【弓の勇者】」
「「「おおおっ!」」」
「ヒロシ様が【弓の勇者】ですか!」
ヒロシの手をとって喜ぶサマンサ。
「お父様。三勇者が出揃いました」
(え、僕は?)
今回は【剣の勇者】【槍の勇者】【弓の勇者】を召喚するもので、その三勇者が出揃った以上は弾路のクラスを聞く意味はない。サマンサにとって巻き込まれただけの弾路はどうでもいい存在だ。
「うむ。三勇者よ。どうか魔王を倒してほしい」
「おう、任せておけ!」
「俺たちに任せろ」
「魔王か。どれだけ強いか楽しみだ」
国王が鷹揚に頷く。
「第一王女サマンサよ、そなたに【剣の勇者】の補佐を任せる」
「身に余る光栄にございます」
サマンサが国王に礼をすると、ユウヤの前に立った。
「今後は私がユウヤ様の補佐をいたします。よろしくお願いします」
「よく分からんが、よろしくだ」
ユウヤはまんざらでもない表情で応える。
「第二王女エリザベスよ、そなたに【槍の勇者】の補佐を任せる」
「お父様、ありがとうございます。誠心誠意、勇者様の補佐をいたします」
国王の横に居たサマンサに負けず劣らずの容姿をした銀髪のエリザベスは、ソウジの前へと進み出て一礼する。
「ソウジ様の補佐をいたします、エリザベスと申します。以後、よろしくお願いいたします」
「こんな綺麗な子とお近づきになれるなんて、俺にも運が向いて来たな」
ソウジは嬉しそうに、エリザベスを受け入れた。
「第三王女カミラよ、そなたは【弓の勇者】の補佐だ。よく務めるのだぞ」
「はい。お父様」
姉二人は美人だが、カミラは緑色の髪をしたおっとりとした可愛い系美少女だ。
「ヒロシ様。私はカミラと申します。以後、よろしくお願いいたします」
国王の横から弘の前へ移動したカミラが微笑むと、弘の目はハートマークに変わった。
「おう、よろしくな。姫様」
ヒロシは可愛らしいカミラに一目惚れしてしまった。
「リーズ大臣。そなたは巻き込まれた者の暮らしが立ちゆくようにしてやってくれ」
「承知いたしました。陛下」
国王は弾路のことを四〇ほどの女性大臣に任せると、玉座を立って退室していった。
(僕は巻き込まれたから、クラスも聞かれなかったのか……まあいいか)
リーズ大臣は弾路の前に立って、メガネをクイッと上げた。
「リーズと申す。巻き込まれし者よ、よろしく頼みおく」
「壊瑠弾路といいます。よろしくお願いします」
「早速だが、こちらへ」
リーズ大臣が弾路を促す。
002_元の世界には帰れない
+・+・+・+・+・+
「私はゴルディア国の第一王女で、サマンサと申します。勇者様方を心から歓迎します」
サマンサは両手でスカートを摘み、弾路たちに一礼した。それがとても可愛らしい所作だったから、高校生の三人はポカンと見入ってしまった。
「お、俺たちはどうなったんだ?」
短髪赤毛、背丈は一八五センチで逞しい体躯をした少年。
「ここはどこで、俺たちをどうするんだ?」
青毛のセミロング、細く見えるが筋肉質で一八一センチの少年。
「説明を求める」
金髪ロングをポニーテールにし、背丈は一七八センチ。弾路より少し背が高い少年。
高校生の三人が積極的に話しかける中、弾路は一歩引いて口を閉じていた。前に出る性格ではないのと、この状況に困惑しているからだ。
「詳しい話は私の父でこの国の国王が行います。こちらにお越しください」
サマンサの後を、騎士たちに囲まれて四人は王の元へと向かう。
(あの姫様の目は怖い……。信じてはいけない目だ)
高校生たちは姫様の可愛さに魅了されているが、弾路だけは姫様を怖いと思っている。
王の間。玉座に座る王は、端正な顔立ちをした髭を蓄えた壮年の人物だ。その両脇にはサマンサに負けず劣らずの二人の美少女が立っている。
さらに鎧の騎士たち、貴族のような人物たちも居る。
「お父様。勇者様方をお連れいたしました」
「うむ。よくやったぞ、サマンサよ。そして、よくぞ来てくれた、勇者たちよ。ワシはそなたらを歓迎する」
大層な歓迎ぶりだ。
「なあ、王様。俺たちはどうなるんだ? 元の世界に帰れるのか?」
赤毛の少年が聞く。とても国王に喋りかける口調ではない。
(国王に向かって、よくあんな言葉遣いができるね。僕ではとても無理だよ)
その尊大さが羨ましくもある弾路だが、できたとしてもやろうとは思わない。
「すまぬが、元の世界に戻す手段はない」
「「「なんだって!?」」」」
高校生たちは元の世界に戻れないと聞いて、剣呑な雰囲気になる。
「落ちついてください。勇者様方」
サマンサが三人にうるうるした目を向けると、三人はバツが悪そうにした。
「元の世界には帰せないが、勇者には貴族に準じた待遇を約束する。魔王を倒した暁には、高位の貴族に叙することも約束する」
国王から貴族という言葉を聞き、三人が顔を見合う。そして、ニヤリと笑い合った。貴族になれば、いい暮らしができる。それ以上に魔王は強いはずだと三人は考えた。
「魔王ってのを倒したら、本当に貴族にしてくれるんだろうな?」
「もちろんだ。だが、魔王は魔族と魔物を統べていて、非常に強大だ」
(僕たちは魔王と戦わされるのか。ライトノベルと同じ展開だけど、僕は怖いのは嫌なんだけど)
弾路は魔王と聞いて、背筋に冷や汗が流れた。好戦的な性格ではないから、戦いに身を置く自分が想像できない。
「ん、勇者は三人ではないのか? サマンサよ、どういうことだ?」
「おそらくですが、三人は勇者様で、一人は巻き込まれた者だと思われます」
国王の疑問にサマンサが答えると、国王は顎に手をやって少し考えた。
「巻き込まれた者には悪いことをした。勇者と同じ待遇には出来ぬが、暮らしが立ちゆくようにさせてもらう」
(あの国王様からは嫌な感じは受けない。もしかしたら姫様のことは僕の勘違いなのかもしれない)
「ところで、誰が勇者で誰が巻き込まれた者なのだ?」
「これから確認いたします。勇者様方、『ステータス・オープン』と念じてみてください」
この世界では自分のステータスが見えると、サマンサは言う。
「「「おおおっ! 見えたぞ!」」」
高校生たちはステータスが見えたと言う。
弾路も『ステータス・オープン』と念じると、自分のステータスが目の前に浮かび上がった。
「まるでゲーム画面のようだな」
赤毛の少年がそう言うと、他の二人も同意した。
(確かにゲーム画面のようだ。それと他人のステータス画面は見えないんだね)
「では、あなた様からお名前とクラスを教えてください」
サマンサが赤毛の少年を指名する。
「俺の名前は御剣勇也。クラスは【剣の勇者】だ」
「「「おおおっ!」」」
「ユウヤ様が【剣の勇者】ですね!」
サマンサが胸の前で手を合わせて喜んだ。
「次はあなた様の名前とクラスを教えてください」
今度は青毛の少年を指名した。
「俺は谷川槍次だ。クラスは【槍の勇者】だぞ」
「「「おおおっ!」」」
「ソウジ様は【槍の勇者】ですか!」
サマンサは目をキラキラさせた。
「今度はあなた様の名前とクラスを教えてください」
金髪の少年を指名した。
「俺か? 俺は木葉弘。クラスは【弓の勇者】」
「「「おおおっ!」」」
「ヒロシ様が【弓の勇者】ですか!」
ヒロシの手をとって喜ぶサマンサ。
「お父様。三勇者が出揃いました」
(え、僕は?)
今回は【剣の勇者】【槍の勇者】【弓の勇者】を召喚するもので、その三勇者が出揃った以上は弾路のクラスを聞く意味はない。サマンサにとって巻き込まれただけの弾路はどうでもいい存在だ。
「うむ。三勇者よ。どうか魔王を倒してほしい」
「おう、任せておけ!」
「俺たちに任せろ」
「魔王か。どれだけ強いか楽しみだ」
国王が鷹揚に頷く。
「第一王女サマンサよ、そなたに【剣の勇者】の補佐を任せる」
「身に余る光栄にございます」
サマンサが国王に礼をすると、ユウヤの前に立った。
「今後は私がユウヤ様の補佐をいたします。よろしくお願いします」
「よく分からんが、よろしくだ」
ユウヤはまんざらでもない表情で応える。
「第二王女エリザベスよ、そなたに【槍の勇者】の補佐を任せる」
「お父様、ありがとうございます。誠心誠意、勇者様の補佐をいたします」
国王の横に居たサマンサに負けず劣らずの容姿をした銀髪のエリザベスは、ソウジの前へと進み出て一礼する。
「ソウジ様の補佐をいたします、エリザベスと申します。以後、よろしくお願いいたします」
「こんな綺麗な子とお近づきになれるなんて、俺にも運が向いて来たな」
ソウジは嬉しそうに、エリザベスを受け入れた。
「第三王女カミラよ、そなたは【弓の勇者】の補佐だ。よく務めるのだぞ」
「はい。お父様」
姉二人は美人だが、カミラは緑色の髪をしたおっとりとした可愛い系美少女だ。
「ヒロシ様。私はカミラと申します。以後、よろしくお願いいたします」
国王の横から弘の前へ移動したカミラが微笑むと、弘の目はハートマークに変わった。
「おう、よろしくな。姫様」
ヒロシは可愛らしいカミラに一目惚れしてしまった。
「リーズ大臣。そなたは巻き込まれた者の暮らしが立ちゆくようにしてやってくれ」
「承知いたしました。陛下」
国王は弾路のことを四〇ほどの女性大臣に任せると、玉座を立って退室していった。
(僕は巻き込まれたから、クラスも聞かれなかったのか……まあいいか)
リーズ大臣は弾路の前に立って、メガネをクイッと上げた。
「リーズと申す。巻き込まれし者よ、よろしく頼みおく」
「壊瑠弾路といいます。よろしくお願いします」
「早速だが、こちらへ」
リーズ大臣が弾路を促す。