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017_戦闘契約者シャズナ
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今日の弾路は、冒険者ギルドのドアを潜っている。
「冒険者登録をお願いします」
「はい。こちらに必要事項をご記入ください」
可愛らしい受付嬢から登録用紙を受け取る。
(今更だけど、この世界の字は書けるのだろうか?)
結果は書けた。日本語で書いたつもりだが、それがこの世界の言語に自動的に変換されているのだ。勇者でも巻き込まれた者でも、この言語変換能力はマストでついてくるものだ。
「ダンジ様ですね。クラスは【弾丸製作者】。弾丸というものはどんなものでしょうか?」
「ちょっとした武器です」
「冒険者は危険な職業です。武器製作系のクラスでも冒険者になりますか?」
「ええ、なります。登録をお願いします」
「承知しました。登録しますので、少々お待ちください」
登録している間、弾路は冒険者ギルド内を見渡した。
出入口は三カ所あって、出入口から見て左側に掲示板がある。正面には受付カウンターがあって、多くの受付嬢の前に冒険者が並んでいる。さらに右側には飲食店があって、朝だと言うのに冒険者たちが酒盛りをしていた。
二階には購買があって、ダンジョン内で使える色々なものが売っている。
「お待たせいたしました。ダンジ様の冒険者証です。こちらをなくしますと、一〇万リトの罰金が科せられますのでなくさないようにお願いします」
冒険者証はキャッシュカードサイズで黒かった。材質は金属のようで、ひんやりとしている。
「ダンジョンに入る時はソロでは危険ですから、パーティーを組むことをお勧めしています。もしパーティーをお探しであれば、ギルドが斡旋することもできます。臨時でパーティーを組みながら、相性の良い方々が見つかると正式にパーティーを組むことも可能です。もちろんダンジョン内で仲間割れしないように出来る限りギルドも考慮しますので、パーティーサービスを受けることも考えてください」
(へー、意外とちゃんとしているんだ)
冒険者のことはライトノベルから得た知識しかない。リアルでそういった知識が役に立つかどうかは分からない。
ただ、ライトノベルの冒険者のイメージは、追放やダンジョン内に置き去りにするような、酷いものだ。
弾路は実際に騎士に剣で切られて森に捨てられた。召喚追放系の話もライトノベルには掃いて捨てる程ある。
騎士が手心を加えてくれたおかげで、弾路はこうして生きている。あの時、とどめを刺されたらお終いだった。それを考えると、ライトノベルのよくある話を完全否定はできなかった。
「また、パーティーがどうしても受け入れられない方は、戦闘契約者を連れていくこともできます」
「戦闘契約者?」
「簡単に言いますと、護衛に近いです。ダンジ様を守るために、戦闘契約者は細心の注意を払います。もしダンジ様が死んだ場合は、戦闘契約者は死刑になりますから、必死でダンジ様を守ってくれますよ」
「それはまた、凄い契約ですね」
「その分、ダンジョン内で得たものの六割から七割が戦闘契約者のものになります。しかも、食料など消費するものは、ダンジ様が負担することになります。簡単に言いますと初心者の方がダンジョンの雰囲気を感じるためには、丁度良いサービスになっていますのでご検討ください」
(なるほど、お金を出して体験させてもらえるわけか。パーティーを組むよりよほどドライな関係だ)
受付嬢はその後も冒険者と冒険者ギルドについて説明した。
登録直後の冒険者のランクはFから始まり、クエスト(依頼)をクリアすることで冒険者ランクが上がっていく。
冒険者ランクが上がると、より高額なクエストを受けられるようになるのだ。
弾路は戦闘契約者を確認することにした。
護衛の他に、ダンジョンの事を教えてくれる教官のようなこともしてくれるからだ。
ダンジョンのことを知らず冒険者としても素人の弾路には、戦闘契約者という制度は丁度良かった。
「いらっしゃいませ。こちらは戦闘契約者斡旋用の受付になります。どのような戦闘契約者をお求めでしょうか?」
快活な声の受付嬢にはタヌキ耳があって、愛嬌のあるクリクリとした目の獣人だった。
獣人は珍しくない。公爵家でも獣人の使用人や騎士を何人も見ているし、町中でも普通に獣人が歩いている。
「冒険者登録したばかりなんで、ダンジョンや冒険者のことを色々教えてくれる戦闘契約者を探しています」
「承知しました。今ですと三人の方が契約可能です。こちらが三人の情報になります」
受付嬢が三枚の書類をカウンターの上に並べた。
「その依頼、私が受けよう」
弾路が書類に目を通そうとした時、凛とした声がした。
その声の主を見ると、美術品のような絶世の美女が立っていた。色白の肌に金色の瞳、そしてサラサラのストレートの銀髪。その銀髪から見える長く尖った耳。
「エルフ?」
弾路は思わずそう漏らした。
弾路にはゲルマン神話に出てくるエルフではなく、ライトノベルなでどお馴染みのエルフに見えた。弾路はゲルマン神話など知らないのだ。
「エルフでは不満かしら?」
「そんなことはないです」
「ちょっとお待ちください。こちらの方は冒険者に成りたてのビギナーですから、シャズナさんの契約条件には合いません」
受付嬢が慌ててエルフ美女を制止した。
「構わない。契約はビギナーに対応したものにしてくれ」
「本当に構わないのですか?」
「大丈夫だ」
受付嬢はカウンターの下から、シャズナの情報が記載された用紙を取り出した。
「ゴホンッ。こちらのシャズナさんの情報です。元SSランク冒険者の方ですから、実力も経験も申し分はありません」
受付嬢は戸惑いながらもシャズナの情報を伝えていく。
(元SSランク!? 冒険者の最高峰じゃないか。そんな人がなんで僕なんかに? まさか、サマンサの命令で僕を暗殺しようとしているの?)
弾路はそこまで考えて、思いとどまった。
(まだ僕が生きているとサマンサは知らないはずだ。このシャズナというエルフは、何が目的で僕に……?)
考えがまとまらず困惑する。
「悩む必要はない。少年は私が無事に連れ帰る」
「……あの、僕は初心者だから、冒険者としての基礎や知識を教えてもらいたいのですが」
「任せろ。少年を立派な冒険者に育ててやる」
「分かりました。貴方にお願いします。僕は弾路といいます。よろしくお願いします」
「シャズナだ。よろしくな」
受付嬢が契約書を用意し、内容を確認。弾路とシャズナがサインして契約完了だ。
017_戦闘契約者シャズナ
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今日の弾路は、冒険者ギルドのドアを潜っている。
「冒険者登録をお願いします」
「はい。こちらに必要事項をご記入ください」
可愛らしい受付嬢から登録用紙を受け取る。
(今更だけど、この世界の字は書けるのだろうか?)
結果は書けた。日本語で書いたつもりだが、それがこの世界の言語に自動的に変換されているのだ。勇者でも巻き込まれた者でも、この言語変換能力はマストでついてくるものだ。
「ダンジ様ですね。クラスは【弾丸製作者】。弾丸というものはどんなものでしょうか?」
「ちょっとした武器です」
「冒険者は危険な職業です。武器製作系のクラスでも冒険者になりますか?」
「ええ、なります。登録をお願いします」
「承知しました。登録しますので、少々お待ちください」
登録している間、弾路は冒険者ギルド内を見渡した。
出入口は三カ所あって、出入口から見て左側に掲示板がある。正面には受付カウンターがあって、多くの受付嬢の前に冒険者が並んでいる。さらに右側には飲食店があって、朝だと言うのに冒険者たちが酒盛りをしていた。
二階には購買があって、ダンジョン内で使える色々なものが売っている。
「お待たせいたしました。ダンジ様の冒険者証です。こちらをなくしますと、一〇万リトの罰金が科せられますのでなくさないようにお願いします」
冒険者証はキャッシュカードサイズで黒かった。材質は金属のようで、ひんやりとしている。
「ダンジョンに入る時はソロでは危険ですから、パーティーを組むことをお勧めしています。もしパーティーをお探しであれば、ギルドが斡旋することもできます。臨時でパーティーを組みながら、相性の良い方々が見つかると正式にパーティーを組むことも可能です。もちろんダンジョン内で仲間割れしないように出来る限りギルドも考慮しますので、パーティーサービスを受けることも考えてください」
(へー、意外とちゃんとしているんだ)
冒険者のことはライトノベルから得た知識しかない。リアルでそういった知識が役に立つかどうかは分からない。
ただ、ライトノベルの冒険者のイメージは、追放やダンジョン内に置き去りにするような、酷いものだ。
弾路は実際に騎士に剣で切られて森に捨てられた。召喚追放系の話もライトノベルには掃いて捨てる程ある。
騎士が手心を加えてくれたおかげで、弾路はこうして生きている。あの時、とどめを刺されたらお終いだった。それを考えると、ライトノベルのよくある話を完全否定はできなかった。
「また、パーティーがどうしても受け入れられない方は、戦闘契約者を連れていくこともできます」
「戦闘契約者?」
「簡単に言いますと、護衛に近いです。ダンジ様を守るために、戦闘契約者は細心の注意を払います。もしダンジ様が死んだ場合は、戦闘契約者は死刑になりますから、必死でダンジ様を守ってくれますよ」
「それはまた、凄い契約ですね」
「その分、ダンジョン内で得たものの六割から七割が戦闘契約者のものになります。しかも、食料など消費するものは、ダンジ様が負担することになります。簡単に言いますと初心者の方がダンジョンの雰囲気を感じるためには、丁度良いサービスになっていますのでご検討ください」
(なるほど、お金を出して体験させてもらえるわけか。パーティーを組むよりよほどドライな関係だ)
受付嬢はその後も冒険者と冒険者ギルドについて説明した。
登録直後の冒険者のランクはFから始まり、クエスト(依頼)をクリアすることで冒険者ランクが上がっていく。
冒険者ランクが上がると、より高額なクエストを受けられるようになるのだ。
弾路は戦闘契約者を確認することにした。
護衛の他に、ダンジョンの事を教えてくれる教官のようなこともしてくれるからだ。
ダンジョンのことを知らず冒険者としても素人の弾路には、戦闘契約者という制度は丁度良かった。
「いらっしゃいませ。こちらは戦闘契約者斡旋用の受付になります。どのような戦闘契約者をお求めでしょうか?」
快活な声の受付嬢にはタヌキ耳があって、愛嬌のあるクリクリとした目の獣人だった。
獣人は珍しくない。公爵家でも獣人の使用人や騎士を何人も見ているし、町中でも普通に獣人が歩いている。
「冒険者登録したばかりなんで、ダンジョンや冒険者のことを色々教えてくれる戦闘契約者を探しています」
「承知しました。今ですと三人の方が契約可能です。こちらが三人の情報になります」
受付嬢が三枚の書類をカウンターの上に並べた。
「その依頼、私が受けよう」
弾路が書類に目を通そうとした時、凛とした声がした。
その声の主を見ると、美術品のような絶世の美女が立っていた。色白の肌に金色の瞳、そしてサラサラのストレートの銀髪。その銀髪から見える長く尖った耳。
「エルフ?」
弾路は思わずそう漏らした。
弾路にはゲルマン神話に出てくるエルフではなく、ライトノベルなでどお馴染みのエルフに見えた。弾路はゲルマン神話など知らないのだ。
「エルフでは不満かしら?」
「そんなことはないです」
「ちょっとお待ちください。こちらの方は冒険者に成りたてのビギナーですから、シャズナさんの契約条件には合いません」
受付嬢が慌ててエルフ美女を制止した。
「構わない。契約はビギナーに対応したものにしてくれ」
「本当に構わないのですか?」
「大丈夫だ」
受付嬢はカウンターの下から、シャズナの情報が記載された用紙を取り出した。
「ゴホンッ。こちらのシャズナさんの情報です。元SSランク冒険者の方ですから、実力も経験も申し分はありません」
受付嬢は戸惑いながらもシャズナの情報を伝えていく。
(元SSランク!? 冒険者の最高峰じゃないか。そんな人がなんで僕なんかに? まさか、サマンサの命令で僕を暗殺しようとしているの?)
弾路はそこまで考えて、思いとどまった。
(まだ僕が生きているとサマンサは知らないはずだ。このシャズナというエルフは、何が目的で僕に……?)
考えがまとまらず困惑する。
「悩む必要はない。少年は私が無事に連れ帰る」
「……あの、僕は初心者だから、冒険者としての基礎や知識を教えてもらいたいのですが」
「任せろ。少年を立派な冒険者に育ててやる」
「分かりました。貴方にお願いします。僕は弾路といいます。よろしくお願いします」
「シャズナだ。よろしくな」
受付嬢が契約書を用意し、内容を確認。弾路とシャズナがサインして契約完了だ。