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015_イリアの訪問(二)
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イリアが帰った後、ダンジは試射には行かずに庭に出た。
【異世界通販】を起動させて【雑貨】をスクロールする。
「これと……これと……これも要るな……」
コンクリートブロック、耐火レンガ、モルタル、桶、左官鍬、コテ、ショベル、軍手などを購入した。
「あの、ダンジ様……」
「何?」
「それは収納系スキルですか?」
(あっ!?)
「そ、そうだよ。ミッシェル」
動揺を隠すように答えた弾路だったが、目は泳ぎ、挙動が不審だ。
そんなことがなくても、収納系に似ているが何か違うとミッシェルは判断した。もちろん、追及することはない。少しずつ情報を集めていけばいいのだ。
「お手伝いします。何をすればよろしいですか」
「それじゃあ、水を汲んできてくれるかな」
「承知しました」
水道の蛇口のようなマジックアイテムがあるから、井戸から水を汲むわけではない。庭にはそのマジックアイテムはなく、家の中で水を汲んでくる必要がある。
ミッシェルが家の中に入っていくのを見送った弾路は、軍手を嵌めて気合を入れる。
「よし、やるか!」
弾路は桶にモルタルの粉を移した。
ショベルに足をかけて、グッと力を入れて地面を少し掘る。
「水をお持ちしました」
「ありがとう、そこに置いておいて」
「わたくしが穴を掘りましょう」
「いいの? 結構力要るよ」
「お任せください」
「ありがとう。それじゃ、これを手に嵌めて」
弾路はミッシェルに軍手を渡した。
弾路に指示された幅六〇センチ、奥行き四〇センチ、深さ一〇センチほどの穴を、ミッシェルは掘る。
その間に弾路はモルタルに水を加え、適度な粘度になるようにこねた。
「このコンクリートブロックをこの穴に敷いていくんだ」
穴にコンクリートブロックを敷き詰める。
水平器を使って平坦な基礎ができた。
「今度はこのモルタルを基礎の上に盛って、この耐火レンガを置いていくんだ」
弾路がモルタルを盛り、その上に耐火レンガを置いていく。耐火レンガの間にも薄くモルタルを塗って、置いての繰り返しだ。
弾路がモルタルを盛り、ミッシェルが耐火レンガを置いていく。出来上がったのは、バーベキュー用の竈だ。これを二つ作った。
・
・
・
一晩明けて、弾路は朝から竈に火を入れて、竈の調子を確かめる。
その間に弾路が【異世界通販】で購入した食材を、ミッシェルが適度な大きさに切っている。
火の調子は申し分ない。弾路は網と鉄板を【異世界通販】で購入して洗う。
「野菜はこんな感じで切ってくれるかな」
「お任せください」
昨日の竈作りもそうだが、何をやらせてもミッシェルの手際は良い。
「ミッシェルはいいお嫁さんになるよ」
「えっ?」
「ミッシェルは何をするにも手際がいいから、いいお嫁さんになると思ったんだ」
炊事に洗濯、それに料理は申し分ないレベルだ。弾路も家事全般はできるが、その弾路が日頃見ていて感心するレベルである。
初めて行う竈作りも手際が良かった。何をするにもそつなくこなすというのが、弾路が受けたミッシェルのイメージだ。
「い、嫌ですわっ!」
珍しく顔を真っ赤にさせたミッシェルが、バンッと弾路の背中を叩く。
「うわっ」
ミッシェルの力がかなり強かったことから、弾路はたたらを踏んだ。
「あ、申しわけございません!」
「あははは。大丈夫だよ」
と言いつつも、背中がかなり痛い。ヒリヒリとする。
昼近くになり、イリアがやって来た。
昨日同様、護衛三人とビンセントだけを連れて来ている。
「やあ、ダンジ。今日は、料理を振舞ってくれるということだったから、楽しみにしていたぞ」
イーサンがにこやかに弾路の手を取った。
「痛っ!?」
そのイーサンの頭をイリアがはたいた。
「お前は私の護衛であろう。料理を食べずにパンでも齧っておればいいのだ」
「そんなー。いいじゃないですかー」
微笑ましい姉弟のじゃれ合いだが、ダンジは二人が姉弟だと知らないからイーサンが不敬罪に問われないか冷や冷やしながら見ていた。
「ダンジ様。お嬢様は今日のことをとても楽しみにしておりました。どうか、お嬢様をよろしくお願いいたします」
イリアが素を出してイーサンとじゃれ合っていることから、ビンセントが気を利かせて弾路に耳打ちした。
「あ、はい。公爵様のお口に合えばいいのですが」
「お嬢様は食べ物に好き嫌いのない方です。大丈夫です」
「それを聞いて安心しました」
イリアよりビンセントのほうが弾路と仲良くなっている。
将を射んとする者はまず馬を射よ。の逆バージョンになってしまった。
「これはなんだ?」
並んだ二つのバーベキュー用の竈を見たイリスは、素直に何かと聞いて来た。
「これからバーベキューをしたいと思います。それ用の竈です」
「バーベキュー? 爺やはバーベキューなる料理を知っておるか?」
「浅学にて、聞き及んだことはございません」
「ほう、爺やも知らぬ料理か。楽しみだ」
イリアは凄い料理が出て来ると考えて、とても楽しそうだ。
(そんなにハードルを上げないで!)
弾路の心の悲鳴が鳴り響く。
015_イリアの訪問(二)
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イリアが帰った後、ダンジは試射には行かずに庭に出た。
【異世界通販】を起動させて【雑貨】をスクロールする。
「これと……これと……これも要るな……」
コンクリートブロック、耐火レンガ、モルタル、桶、左官鍬、コテ、ショベル、軍手などを購入した。
「あの、ダンジ様……」
「何?」
「それは収納系スキルですか?」
(あっ!?)
「そ、そうだよ。ミッシェル」
動揺を隠すように答えた弾路だったが、目は泳ぎ、挙動が不審だ。
そんなことがなくても、収納系に似ているが何か違うとミッシェルは判断した。もちろん、追及することはない。少しずつ情報を集めていけばいいのだ。
「お手伝いします。何をすればよろしいですか」
「それじゃあ、水を汲んできてくれるかな」
「承知しました」
水道の蛇口のようなマジックアイテムがあるから、井戸から水を汲むわけではない。庭にはそのマジックアイテムはなく、家の中で水を汲んでくる必要がある。
ミッシェルが家の中に入っていくのを見送った弾路は、軍手を嵌めて気合を入れる。
「よし、やるか!」
弾路は桶にモルタルの粉を移した。
ショベルに足をかけて、グッと力を入れて地面を少し掘る。
「水をお持ちしました」
「ありがとう、そこに置いておいて」
「わたくしが穴を掘りましょう」
「いいの? 結構力要るよ」
「お任せください」
「ありがとう。それじゃ、これを手に嵌めて」
弾路はミッシェルに軍手を渡した。
弾路に指示された幅六〇センチ、奥行き四〇センチ、深さ一〇センチほどの穴を、ミッシェルは掘る。
その間に弾路はモルタルに水を加え、適度な粘度になるようにこねた。
「このコンクリートブロックをこの穴に敷いていくんだ」
穴にコンクリートブロックを敷き詰める。
水平器を使って平坦な基礎ができた。
「今度はこのモルタルを基礎の上に盛って、この耐火レンガを置いていくんだ」
弾路がモルタルを盛り、その上に耐火レンガを置いていく。耐火レンガの間にも薄くモルタルを塗って、置いての繰り返しだ。
弾路がモルタルを盛り、ミッシェルが耐火レンガを置いていく。出来上がったのは、バーベキュー用の竈だ。これを二つ作った。
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一晩明けて、弾路は朝から竈に火を入れて、竈の調子を確かめる。
その間に弾路が【異世界通販】で購入した食材を、ミッシェルが適度な大きさに切っている。
火の調子は申し分ない。弾路は網と鉄板を【異世界通販】で購入して洗う。
「野菜はこんな感じで切ってくれるかな」
「お任せください」
昨日の竈作りもそうだが、何をやらせてもミッシェルの手際は良い。
「ミッシェルはいいお嫁さんになるよ」
「えっ?」
「ミッシェルは何をするにも手際がいいから、いいお嫁さんになると思ったんだ」
炊事に洗濯、それに料理は申し分ないレベルだ。弾路も家事全般はできるが、その弾路が日頃見ていて感心するレベルである。
初めて行う竈作りも手際が良かった。何をするにもそつなくこなすというのが、弾路が受けたミッシェルのイメージだ。
「い、嫌ですわっ!」
珍しく顔を真っ赤にさせたミッシェルが、バンッと弾路の背中を叩く。
「うわっ」
ミッシェルの力がかなり強かったことから、弾路はたたらを踏んだ。
「あ、申しわけございません!」
「あははは。大丈夫だよ」
と言いつつも、背中がかなり痛い。ヒリヒリとする。
昼近くになり、イリアがやって来た。
昨日同様、護衛三人とビンセントだけを連れて来ている。
「やあ、ダンジ。今日は、料理を振舞ってくれるということだったから、楽しみにしていたぞ」
イーサンがにこやかに弾路の手を取った。
「痛っ!?」
そのイーサンの頭をイリアがはたいた。
「お前は私の護衛であろう。料理を食べずにパンでも齧っておればいいのだ」
「そんなー。いいじゃないですかー」
微笑ましい姉弟のじゃれ合いだが、ダンジは二人が姉弟だと知らないからイーサンが不敬罪に問われないか冷や冷やしながら見ていた。
「ダンジ様。お嬢様は今日のことをとても楽しみにしておりました。どうか、お嬢様をよろしくお願いいたします」
イリアが素を出してイーサンとじゃれ合っていることから、ビンセントが気を利かせて弾路に耳打ちした。
「あ、はい。公爵様のお口に合えばいいのですが」
「お嬢様は食べ物に好き嫌いのない方です。大丈夫です」
「それを聞いて安心しました」
イリアよりビンセントのほうが弾路と仲良くなっている。
将を射んとする者はまず馬を射よ。の逆バージョンになってしまった。
「これはなんだ?」
並んだ二つのバーベキュー用の竈を見たイリスは、素直に何かと聞いて来た。
「これからバーベキューをしたいと思います。それ用の竈です」
「バーベキュー? 爺やはバーベキューなる料理を知っておるか?」
「浅学にて、聞き及んだことはございません」
「ほう、爺やも知らぬ料理か。楽しみだ」
イリアは凄い料理が出て来ると考えて、とても楽しそうだ。
(そんなにハードルを上げないで!)
弾路の心の悲鳴が鳴り響く。