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012_情報整理(一)
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「お帰りなさいませ。ダンジ様」
「ただいま、ミッシェル」
「お食事にしますか、お風呂にしますか、それともわ・た・し」
ミッシェルがお約束の言葉を言うと、ダンジは固まった。
(わ・た・しって、何? あの巨乳を揉んでいいの? まあ、僕には無理なんだけどさ……)
同年代の女性には嫌悪感しかないが、女性全般が嫌いなわけではない。
ミッシェルは一〇代に見えるが、さすがに一周りも違うミッシェルに手つけたら犯罪だと思っている。それ以前に、ヘタレの弾路が女性に手を出すなど考えられない。
「ははは。それじゃあ、風呂にしようかな」
華麗にスルーしたと思っている弾路だが、ミッシェルには動揺が手に取るように分かった。
「すぐにお着替えを用意いたします」
相変わらず一緒に風呂に入って来るミッシェルに、最近は諦め始めた弾路。
それに、手は触れずともミッシェルの裸体はとても美しい。眼福である。
体を洗い終え、湯船に浸かると弾路はミッシェルにも浸かるように言う。
「いえ、わたくしは───」
「僕のメイドで居たいなら、一緒に入って」
(そんなところに突っ立っていられてはゆっくり浸かれないよ。それに風邪でも引かれたら目覚めが悪い)
「承知しました」
ゆっくりと湯船に浸かるミッシェル。公爵邸のように大きな風呂ではないから、二人が入ったら狭いくらいだ。
「毎日裸の付き合いしているけど、二人で入るのもおつなものだね」
(僕は何を言っているんだ!?)
「温かいです」
「ゆっくり浸かろう。そうだ、ミッシェルに教えてほしいことがあるんだけど、聞いていいかな」
「わたくしの答えられることであれば、喜んでお答えします」
ミッシェルたちに【弾丸の勇者】だと知られてないと思っている弾路は、言葉を選びながら質問することにした。
「このガーランドの周辺の地理を教えてもらるかな。旅をしていたら、どこを歩いているか分からなくなっちゃって……あははは」
目が泳いで言い訳が不自然。そのことに弾路は気づいていない。
「はい。まず、このガーランドがあるのは、ザイムディード帝国ムドラ州になります。ガーランドはムドラ州の州都です」
「ほうほう……」
方向音痴、またはちょっとヌケているところをさりげなく演出しているつもりの弾路だが、まったくさりげなくではなかった。それでもミッシェルは特に反応せずに答える。
(ザイムディード帝国ということは、ゴルディア国から出られたんだ。よかったー)
「ムドラ州はザイムディード帝国の北部にあり、北部から東部にかけて死の森と隣接としております。また。北西部には隣国ゴルディア国があって、ガーランドはゴルディア国に対する防衛拠点でもあります」
(やっぱり隣国なんだ。防衛拠点ということは、あまり仲が良くないのかな?)
「えーっと、ガーランドがゴルディア国に対する防衛拠点ってことは、ザイムディード帝国とゴルディア国の仲は悪いの?」
「以前は悪くなかったのですが、この数年はあまりよろしくはありません」
「なんで?」
「はっきりとは分かりませんが、ゴルディア国の姫たちが政治に介入し出したためだと聞いたことがあります」
(あー、あの性悪サマンサか。あいつが政治に関わったから、この国と仲が悪くなったとか、最悪な奴だな)
「大丈夫なの? ゴルディア国が戦争をしかけて来ない?」
「断言はできませんが、大丈夫ではないでしょうか。ゴルディア国は魔王国と接していますから、そちらに戦力を集中していると思います」
「魔王国か……この国は大丈夫?」
「帝国は魔王国と国境を接していません。ただ、死の森を隔てて魔王国と隣接しておりますから、気は抜けないと思います」
「そういった防衛は公爵様が指揮しているの?」
「そうです。公爵閣下がゴルディア国と死の森を隔てた魔王国に対する防衛の司令官になります」
(あの美人の公爵様も苦労しているんだな……特にゴルディア国は性質が悪そうだから、なんだか気の毒になってしまうよ)
「しかし、ご安心ください。ゴルディア国は小国、このムドラ州程度の国力です。大国である帝国に攻めて来るような暴挙はしないでしょう」
(僕のクラスをちゃんと聞かない考えなしのサマンサなら、その暴挙というやつをしそうな気がするんですけど……)
「死の森について教えてくれるかな」
(多分、僕が捨てられたのは、その死の森だ)
「死の森はとても広大です。大国である帝国や魔王国の国土よりも広いと言われています」
(そんなに広いんだ)
「死の森は外周部でも高ランクの魔物が居ます。さらに奥には破滅級の魔物まで居る危険な場所です」
(危険と言われても、魔物のランクが分からないんですけど)
「魔物のランクというのを教えてくれるかな」
「魔物には下からF、E、D、C、B、A、S、SS、災害級、破滅級という危険度が設定されています。Sランクは町を滅ぼし、SSランクは大都市を滅ぼし、災害級は国を滅ぼし、破滅級は世界を滅ぼす。そう定義されています」
(いや、災害級までは分かるけど、殲滅級って何? 世界を滅ぼしたらアカンっやん)
「えーっと、ツインヘッドレオパルドという魔物を知ってるかな?」
「はい。とても危険な魔物です。危険度はBランクになります」
(おー、あの二つの頭のネコはBランクの魔物だったんだ!)
「じゃあ、グリーンウルフは?」
グリーンウルフは三〇口径回転式拳銃の試射をした後、戦闘になった六体のオオカミだ。
「危険度Dの魔物です」
(強さや危険度で【異世界通販】の売却額が決まる感じっぽい。でも、DからBになるだけで、三万円が一〇〇万円になるの? 凄い上昇率だよね)
「死の森の魔物は出てこないの?」
「滅多に出てきません。前回はわたくしが生まれる前にSランクの魔物が出て来たはずです」
「もしSランクの魔物が出てきたら、公爵様の軍が戦うの?」
「いえ、魔物の場合は冒険者という職業の方々が対処されます」
(冒険者、キターーーッ!)
無表情を装っている弾路だが、鼻の穴が開き頬が緩んでいるのがミッシェルにしっかりと見られていた。
「冒険者は魔物を退治する職業かな?」
「主にダンジョンを探索するのが仕事ですが、ダンジョンには多くの魔物が存在しますから、冒険者は魔物退治の専門家のような感じになっています」
(ダンジョン、キターーーッ!)
「このガーランドのそばにダンジョンはあるの?」
「ガーランドの中にあります」
「えっ、そうなの?」
「はい。ガーランドダンジョンです。魔物の素材は色々なことに使われますし、ダンジョンの中だけに自生している薬草、それに鉱物がありますのでガーランドはダンジョンの運営によって潤っています」
012_情報整理(一)
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「お帰りなさいませ。ダンジ様」
「ただいま、ミッシェル」
「お食事にしますか、お風呂にしますか、それともわ・た・し」
ミッシェルがお約束の言葉を言うと、ダンジは固まった。
(わ・た・しって、何? あの巨乳を揉んでいいの? まあ、僕には無理なんだけどさ……)
同年代の女性には嫌悪感しかないが、女性全般が嫌いなわけではない。
ミッシェルは一〇代に見えるが、さすがに一周りも違うミッシェルに手つけたら犯罪だと思っている。それ以前に、ヘタレの弾路が女性に手を出すなど考えられない。
「ははは。それじゃあ、風呂にしようかな」
華麗にスルーしたと思っている弾路だが、ミッシェルには動揺が手に取るように分かった。
「すぐにお着替えを用意いたします」
相変わらず一緒に風呂に入って来るミッシェルに、最近は諦め始めた弾路。
それに、手は触れずともミッシェルの裸体はとても美しい。眼福である。
体を洗い終え、湯船に浸かると弾路はミッシェルにも浸かるように言う。
「いえ、わたくしは───」
「僕のメイドで居たいなら、一緒に入って」
(そんなところに突っ立っていられてはゆっくり浸かれないよ。それに風邪でも引かれたら目覚めが悪い)
「承知しました」
ゆっくりと湯船に浸かるミッシェル。公爵邸のように大きな風呂ではないから、二人が入ったら狭いくらいだ。
「毎日裸の付き合いしているけど、二人で入るのもおつなものだね」
(僕は何を言っているんだ!?)
「温かいです」
「ゆっくり浸かろう。そうだ、ミッシェルに教えてほしいことがあるんだけど、聞いていいかな」
「わたくしの答えられることであれば、喜んでお答えします」
ミッシェルたちに【弾丸の勇者】だと知られてないと思っている弾路は、言葉を選びながら質問することにした。
「このガーランドの周辺の地理を教えてもらるかな。旅をしていたら、どこを歩いているか分からなくなっちゃって……あははは」
目が泳いで言い訳が不自然。そのことに弾路は気づいていない。
「はい。まず、このガーランドがあるのは、ザイムディード帝国ムドラ州になります。ガーランドはムドラ州の州都です」
「ほうほう……」
方向音痴、またはちょっとヌケているところをさりげなく演出しているつもりの弾路だが、まったくさりげなくではなかった。それでもミッシェルは特に反応せずに答える。
(ザイムディード帝国ということは、ゴルディア国から出られたんだ。よかったー)
「ムドラ州はザイムディード帝国の北部にあり、北部から東部にかけて死の森と隣接としております。また。北西部には隣国ゴルディア国があって、ガーランドはゴルディア国に対する防衛拠点でもあります」
(やっぱり隣国なんだ。防衛拠点ということは、あまり仲が良くないのかな?)
「えーっと、ガーランドがゴルディア国に対する防衛拠点ってことは、ザイムディード帝国とゴルディア国の仲は悪いの?」
「以前は悪くなかったのですが、この数年はあまりよろしくはありません」
「なんで?」
「はっきりとは分かりませんが、ゴルディア国の姫たちが政治に介入し出したためだと聞いたことがあります」
(あー、あの性悪サマンサか。あいつが政治に関わったから、この国と仲が悪くなったとか、最悪な奴だな)
「大丈夫なの? ゴルディア国が戦争をしかけて来ない?」
「断言はできませんが、大丈夫ではないでしょうか。ゴルディア国は魔王国と接していますから、そちらに戦力を集中していると思います」
「魔王国か……この国は大丈夫?」
「帝国は魔王国と国境を接していません。ただ、死の森を隔てて魔王国と隣接しておりますから、気は抜けないと思います」
「そういった防衛は公爵様が指揮しているの?」
「そうです。公爵閣下がゴルディア国と死の森を隔てた魔王国に対する防衛の司令官になります」
(あの美人の公爵様も苦労しているんだな……特にゴルディア国は性質が悪そうだから、なんだか気の毒になってしまうよ)
「しかし、ご安心ください。ゴルディア国は小国、このムドラ州程度の国力です。大国である帝国に攻めて来るような暴挙はしないでしょう」
(僕のクラスをちゃんと聞かない考えなしのサマンサなら、その暴挙というやつをしそうな気がするんですけど……)
「死の森について教えてくれるかな」
(多分、僕が捨てられたのは、その死の森だ)
「死の森はとても広大です。大国である帝国や魔王国の国土よりも広いと言われています」
(そんなに広いんだ)
「死の森は外周部でも高ランクの魔物が居ます。さらに奥には破滅級の魔物まで居る危険な場所です」
(危険と言われても、魔物のランクが分からないんですけど)
「魔物のランクというのを教えてくれるかな」
「魔物には下からF、E、D、C、B、A、S、SS、災害級、破滅級という危険度が設定されています。Sランクは町を滅ぼし、SSランクは大都市を滅ぼし、災害級は国を滅ぼし、破滅級は世界を滅ぼす。そう定義されています」
(いや、災害級までは分かるけど、殲滅級って何? 世界を滅ぼしたらアカンっやん)
「えーっと、ツインヘッドレオパルドという魔物を知ってるかな?」
「はい。とても危険な魔物です。危険度はBランクになります」
(おー、あの二つの頭のネコはBランクの魔物だったんだ!)
「じゃあ、グリーンウルフは?」
グリーンウルフは三〇口径回転式拳銃の試射をした後、戦闘になった六体のオオカミだ。
「危険度Dの魔物です」
(強さや危険度で【異世界通販】の売却額が決まる感じっぽい。でも、DからBになるだけで、三万円が一〇〇万円になるの? 凄い上昇率だよね)
「死の森の魔物は出てこないの?」
「滅多に出てきません。前回はわたくしが生まれる前にSランクの魔物が出て来たはずです」
「もしSランクの魔物が出てきたら、公爵様の軍が戦うの?」
「いえ、魔物の場合は冒険者という職業の方々が対処されます」
(冒険者、キターーーッ!)
無表情を装っている弾路だが、鼻の穴が開き頬が緩んでいるのがミッシェルにしっかりと見られていた。
「冒険者は魔物を退治する職業かな?」
「主にダンジョンを探索するのが仕事ですが、ダンジョンには多くの魔物が存在しますから、冒険者は魔物退治の専門家のような感じになっています」
(ダンジョン、キターーーッ!)
「このガーランドのそばにダンジョンはあるの?」
「ガーランドの中にあります」
「えっ、そうなの?」
「はい。ガーランドダンジョンです。魔物の素材は色々なことに使われますし、ダンジョンの中だけに自生している薬草、それに鉱物がありますのでガーランドはダンジョンの運営によって潤っています」