「園田君、こっち来て」
「あ、うん」
僕は坂井さんの隣で、この店で一番大きなカートを押しながら岡田さんに呼ばれた場所に向かう。
そのカートの中に、看板製作に使う材料が大量に放り込まれていく。
「あかり、あと何だっけ?」
「えっと、あとは、やすりと……」
僕の隣で買い出しメモをスマホで確認しながら、坂井さんはぽつりとつぶやいた。
今日は材料の買い出しにホームセンターにやってきた。
本来なら授業中である平日のこの時間に学校以外の場所にいるのは、なんだか新鮮だった。
いつも見ているはずの景色が、まるで違って見える。
必要なものはすべてここで揃えられるため、他の生徒も買い出しにやってきていた。
平日なのでお客さんが少ないのもあって、同じ制服を着た学生の姿をよく見かけると、まるでここが学校になってしまったような感覚になる。
それにしても、ホームセンターとはいろんなものが売っている。
生活用品はもちろん、画材道具や木工道具、見たことがないような部品とか、道路工事の時なんかによく見るコーンとか。
種類も豊富だし、見ているだけで一日が終わってしまいそうだ。
高い天井に負けないくらい背の高い棚には、こまごまとしたものが所狭しと並んでいる。
ここから目的のものを見つけ出すのは大変そうと思う一方で、こんなものまで売ってるのかと驚いたり、わくわくしたりもした。
同じグループの男子がふざけて大鍋を振り回したり、試供品を試したり、実演販売に見入ったりと、楽しく回れた。
そもそも僕にとって、こうして友達とわいわい買い物をするというのも初めての経験だった。
そこに坂井さんがいる。
楽しさも嬉しさもわくわくも、倍増だ。