坂井さんと二年間も同じクラスであったにもかかわらず、文化祭でグループになって作業をするのは初めてだった。
一年生の時はステージの出し物で、グループ分けも、自分の好きな担当に立候補する形だった。
二年生の時は、担当が男子と女子で完全に分けられた。
だから、坂井さんと僕に接点が生まれることなんてなかったのだ。

授業は午前中で切り上げられ、午後からは完全に祭りの準備に充てられるという特別日課が始まった。
僕たちの学校はこういったイベントごとに力を入れるので、今のこの時期は、受験生である僕たち三年生も例外なく、祭りの準備にいそしむことになる。
だけどそれは、受験のことを忘れられる、いい息抜きになっていた。

高校三年間で、これほど楽しみな祭り準備はなかった。
その理由は、坂井さんと同じ時間を過ごせるからというのが大きい。
昼休みが終わるとグループで集まって話し合いをしたり、学校の近くの大型ホームセンターに材料の買い出しに行ったり、各々の担当の物の作成などを進めていく。
その時間の中に、いつでも坂井さんを近くに感じることができた。
今日もまた、僕は彼女の隣を歩く。