そしてもう一つ信じられないのは、勝見君もまた、私と同じだったということだ。
つまり、勝見君も私に、一目ぼれをしたということだ。

__「坂井さんに、一目ぼれしたから」

告白の時、勝見君は私にそう言った。
涙が出そうになった。
私と同じ気持ちでいてくれたこと、そしてその理由が、同じ「ひとめぼれ」だったから。
それは、運命のいたずらとしか、思えなかった。
思いが通じ合った瞬間、この恋は終わったと思った。
だって、お互い一目ぼれだよ。
ただでさえ一目ぼれの恋なんて上手くいかないのに、それで両想いって。
すでに目に見えている悲しすぎる恋の結末に、付き合い始めたその日から私は落胆していた。

そもそも、自分で言うのもなんだけど、私に一目ぼれするような要素って、正直ひとつもない。
由美みたいに美人でもなければ、かわいいわけでもない。
性格も明るいわけでもポジティブなわけでもないし、クラスの中心でいろいろ仕切ったりするタイプでもない。
賢いわけでも、しっかり者でもない。
短所しか見つからない。
そんな私に一目ぼれするなんて、勝見君の勘違いとしか思えない。

半信半疑な気持ちを抱えながら付き合いを始めた頃、たまたまその理由を聞くことができた。
勝見君の答えは、

__「なんとなく……」

ただそれだけだった。
そんな理由を聞くと、かなり微妙な心境になるんだけど、勝見君のことを知った今なら、その「何となく」の重みがわかる。