坂井さんにとって僕はクラスメイトというより、「彼氏の友達」、という認識なんだ。
そう思われてもしょうがない。
だって僕は、何もできないんだから。
何もできなかったんだから。
彼女に自分から話しかけることも、思いを告げることも。

今も目の前でこうして辛い顔をしている彼女を慰めることも、元気づけるようなジョークを言うことも、できないんだから。

あいつの代わりに、なんて……。

僕はそっと視線を上げた。
坂井さんの瞳の中に、僕は映っていない。
その目には涙がたまっていて、こらえきれずにぼたぼたと落ちる。
そっと手を差し出したくなる指先を、手に持ったカップで抑え込む。

それなのに……、


__ほんとに僕じゃ、ダメなのかな。


だって、そんな顔したら、僕の気持ちは、今のままじゃ済まないよ。
遠くから見ているだけでいい、なんて。
君のそばにいられるだけで幸せ、なんて。