僕と岡田さんは絶句したまま、お互いの視線だけ交し合った。

「えっと……ほら、勝見君、忙しいし……」
「わかってるよ。でも好きなら、一緒にいたいって思うじゃん。声聞きたいって思うじゃん。でも、それは私ばっかりで、勝見君は……」

彼女はそこで言葉を切った。
ゆっくりと持ち上げられた坂井さんの顔には、表情がなかった。
うつろな目、落ちた頬、少し曲がった唇。
日に日に表情の変化が乏しくなっていく坂井さんに、僕は一学期のころから気づいていた。