坂井さんとは、この高校三年間ずっと同じクラスだ。
「さ」と「そ」でいつも出席番号が前後だった。
グループ活動もペア活動もよく一緒になった。
二年生の時に行った修学旅行も同じグループだった。
だからってものすごく仲がいいわけではなかった。
話すことと言えば、その時の活動に必要なことだけ。
日常的に話すことなんてなかった。
坂井さんは特別美人なわけでも可愛いわけでもない。
見た目だって派手ではないし、性格だって明るい方ではない。
他の女子がスカート丈を短くしたり、校則に反した制服の着こなしをしているのに対し、彼女の制服の着こなしはいたって普通だった。
どこにでもいるような、普通の女子高生だ。
普通に過ごしていたら、僕もきっと、彼女の存在なんて、グループ活動やペア活動の時に意識するぐらいだった。
それなのに、高校一年生のどしょっぱつから、僕の彼女への意識は、恋になっていた。
なぜそうなったかは、僕にもわからない。
あえて理由を述べるなら、一目見て、「好きだ」と感じた、ただそれだけだ。
いわゆる、ひとめぼれってやつだ。