僕はそそくさと岡田さんが座るボックス席に向かった。
浮かれ気味にその席に到着した僕は、テーブルにトレーを置こうとして、目の前の光景にぎょっとした。
「さ、坂井さん?」
そこにいるのは、確かに坂井さんだ。
テーブルに突っ伏していて顔が見えなくても、丸みのあるボブヘアがその顔を覆ってしまっても、どんなに負のオーラを放っていようと、それが坂井さんだと、僕にはわかる。
「ここ、どうぞ」と岡田さんは自分の鞄を横にずらして、僕のために席を空けてくれた。
「あ、ありがとう」と言いながらも、僕はテーブルの上でうずくまる坂井さんから目を離さないまま席に着いた。
「だ、大丈夫?」
僕は坂井さんにではなく、岡田さんに小さな声で聞いた。
「今あかり、情緒不安定だから」
耳元でささやかれたその声に、どきりとした。
視線を横にやると、すぐ近くに岡田さんの顔があった。
高い位置でポニーテールをしている岡田さんは、いつもと雰囲気が違ってドキドキする。
首筋がすーっと伸びていて、そこからちょろちょろと出ているふわふわとした毛がなんとも色っぽい。
それにこの席に近づいてすぐに気づいたけど、すごくいい匂いがする。
思えばこんなに接近したこともない。
半袖のカッターシャツをさらに一つ折り曲げた袖からのびる白くてほっそりとした腕は、皮膚のきめが細かくて、見るからにすべすべしてそうだった。
目のやり場に、困る。
僕は岡田さんとは少し距離を取って座った。
普通に並んで座ったら、頭がおかしくなってしまいそうだ。
そんな僕のことは気にも留めず、岡田さんはいつも通りに話しかけてくる。
浮かれ気味にその席に到着した僕は、テーブルにトレーを置こうとして、目の前の光景にぎょっとした。
「さ、坂井さん?」
そこにいるのは、確かに坂井さんだ。
テーブルに突っ伏していて顔が見えなくても、丸みのあるボブヘアがその顔を覆ってしまっても、どんなに負のオーラを放っていようと、それが坂井さんだと、僕にはわかる。
「ここ、どうぞ」と岡田さんは自分の鞄を横にずらして、僕のために席を空けてくれた。
「あ、ありがとう」と言いながらも、僕はテーブルの上でうずくまる坂井さんから目を離さないまま席に着いた。
「だ、大丈夫?」
僕は坂井さんにではなく、岡田さんに小さな声で聞いた。
「今あかり、情緒不安定だから」
耳元でささやかれたその声に、どきりとした。
視線を横にやると、すぐ近くに岡田さんの顔があった。
高い位置でポニーテールをしている岡田さんは、いつもと雰囲気が違ってドキドキする。
首筋がすーっと伸びていて、そこからちょろちょろと出ているふわふわとした毛がなんとも色っぽい。
それにこの席に近づいてすぐに気づいたけど、すごくいい匂いがする。
思えばこんなに接近したこともない。
半袖のカッターシャツをさらに一つ折り曲げた袖からのびる白くてほっそりとした腕は、皮膚のきめが細かくて、見るからにすべすべしてそうだった。
目のやり場に、困る。
僕は岡田さんとは少し距離を取って座った。
普通に並んで座ったら、頭がおかしくなってしまいそうだ。
そんな僕のことは気にも留めず、岡田さんはいつも通りに話しかけてくる。