塾で分からなかった問題がすっきり解決して、僕は早々にカフェを出た。
脳が疲れて甘いものを欲していた。
別にあいつのバイト先で甘いカフェオレでも注文すればいいんだけど、あんなところにいては心が落ち着かない。
僕はわざわざ塾のある駅前方面まで戻った。
そこの駅ビルには少し大きめのカフェが入っていて、塾の行き帰りや、授業の合間に利用する学生が多かった。
僕は予定通りカフェオレを注文して、店内を見渡した。
ちょうど夕方からの授業が始まる生徒がぞろぞろと出て行って、店内には空席ができていく。
それでも僕はすぐに席にはつかず、ぼんやりと店内を見渡していた。
はっと胸が弾むのを確認すると、僕は見つけた席にずんずん進んでいく。
目的の席に座ろうとしたその時、「ここにしよー」と甘ったるくはしゃぐ声が僕のそばを通り過ぎていく。
明るい髪に制服を着崩した女子生徒が何人か、その場にいた僕を押しのけるように席に座る。
そしてその周りの席も使って荷物を置いていく。
「空いててラッキー」
その空間だけ、一気に騒がしくなる。
行き場を失った僕は呆然と立ち尽くして、まだその席を見ていた。
他にも席は空いてるんだけど、僕がその場から動けないのは、その席が良かったからだ。
その席じゃなきゃダメだからだ。
その席じゃないと、彼女の姿を盗み見ることはできないから。
勉強で疲れた、僕の、癒し。