僕同様、「彼女」という言葉とは無縁のこの男に彼女ができたのは、二年生の二学期も後半戦を迎えた頃だった。

僕たちはサッカー部が同じだったというのもあって、クラスが違っても、一年の時から結構仲が良かった。
唯一同じクラスになったのは、二年の時だけだ。

あいつは僕と同じように、学校では地味で存在感の薄い奴だった。
目立つことは嫌いだし、いつも面倒なことから上手いこと逃げるのが上手かった。
同じ部活、地味男子、彼女なし。
共通点は意外とたくさんあった。
だけど、違うところもたくさんあった。
成績とか運動神経とか、友達の多さとか。

だけどあいつが何かで注目を浴びたところを見たことがなかった。
女子からモテることもない。
学校で目立つ広瀬とは仲がよくても、つるむことは決してしない。
目立ちたくないゆえに自ら気配を消しているのか、それとも周りが本当にその存在に気づいていないのか、どちらかはよくわからないけど、とにかくあいつは、本当にいるのかいないのか、いたのかいなかったのか、よくわからないところがあった。

それでも、僕にとっては、大きな存在だった。
高校でできた、数少ない友達だからかもしれない。
いつも一緒にいるからかもしれない。
僕と同じ、僕と似ている。
だから居心地がいい。

僕は勝手に、そんな仲間意識であいつと一緒にいた。
同じ地味男子同士、細々と学校生活をエンジョイしているつもりだった。