修業期間も含めた三日間に及ぶ激動のバイトが終わって、僕はもうぐったりだった。
ピックでたこ焼きを細かくつつき続けた両手は、何もしていないのに震えている。
腕もパンパンだ。
はちまきを外した髪は逆立ってなかなか下りてこない。
僕は一生に食べる分のたこ焼きを焼いたと思う。

「お疲れ」

あいつは僕に缶コーヒーと綿あめをさしだした。

__この組み合わせって、どうなの?

そう思いながらも、僕はそれをありがたく受け取った。

あいつが自分の缶コーヒーに手をかけると、ぱかっと爽快な音が、祭りの名残をかすかに含んだ店内に響いた。

「園田、やせた?」

あいつはニヤニヤしながら僕の顔を覗き込む。

やせたんじゃない、やつれたんだ。

「お前は元気だな。あんなに日本語以外の言葉をかわるがわる話してるのに。頭破裂しないの?」
「するかよ、あれぐらいで」

おかしそうに笑うあいつをぎろりと睨みつけて、僕は缶コーヒーを飲む。
口に含んだとたん、感じたことのない苦みが口に広がる。
缶のパッケージを見ると、全体が真っ黒だ。
それもそのはず、差し出されたのはブラックのコーヒーだ。
ブラックコーヒーなんて、生まれてこの方飲んだことない。
僕の専門は甘いカフェオレだ。
僕はすかさず、もう片方の手に握らされた綿あめにかぶりつく。
口の中に甘さがふわっと広がって、あっという間になくなる。
あのコーヒーの苦みも連れて。

__おお、めちゃめちゃいい組み合わせ。

その味と感覚は癖になるほどで、僕は気が済むまで交互に食べたり飲んだりした。