「あかり、焦げてる」

その声で、我に返った。
我に返った私の目には、形を成すことなく、まる焦げになったたこ焼きが無残な姿で煙を出していた。
いやもう、もはやこれをたこ焼きと言ってはいけない。

「うわっ、またやっちゃった」

練習でやった通り両手に持ったピックで突いてみるけど、今さらもう遅い。
こんなものは売り物にならない。
じゃあこれは、どうしたらいいのだろう。
鉄板に張り付いて、取れる様子もない。
だったらこのたこ焼きは、ここに取り残されることになるのか。
このまま。
まるで、私みたい。
無残で惨めなたこ焼きに自分の姿を重ねるのは、たこ焼きに失礼だろうか。

たこ焼きに切ないため息を浴びせかけた時だった。
後ろからふわりと腕が伸びてきた。
その腕の先で、私の丸焦げになったたこ焼きが、見事にひっくり返されていく。
相変わらず丸焦げで、決して丸になることはないんだけど、私のたこ焼きは無事鉄板から救出されていく。

視線を上にやると、そこにいたのは、園田君だった。

「園田君、すごっ」

由美に褒められて、照れ笑いをこらえているのか、園田君の口元がいびつに歪む。

園田君は、たこ焼きを焼くのが上手かった。
練習の時は「ちょっとやったことある程度」と言って、確かに私たち初心者と変わらない覚束ない手つきだったのに、今日になって、その頭角を現してきた。

私たちが二つのピックで何とかくるりと回して丸にしていくのが精いっぱいなのに、園田君はたった一本のピックで見事にたこ焼きを丸くしていく。
ものすごいスピードのピックさばきに、私たちの屋台の前を歩く人たちが足を止める。
そしていつの間にか、私たちのクラスの屋台に行列ができていた。「坂井さん、ここは大丈夫だから、岡田さん手伝って」

視線が差した方を確認すると、由美が鉄板に次の生地を流し込んだばかりだった。

「あ、うん」

慌てて場所を移動して、由美が生地を流しいれたところに具材を入れていく。