そう思うのに、自分に言い聞かせようとすればするほど、みるみるうちに視界がぼやけ始めた。

「……坂井さん?」
「そっかあ、留学かあ。やっぱすごいなあ、勝見君は」

目元を誤魔化すには、もう顔を伏せるしかなかった。
無理に笑うしかなかった。
声を出すしかなかった。

「私も頑張らないとなあ、勝見君みたいに」

これ以上何を頑張ったらいい?
私には何が足りない?
私も留学したらいい?
そうしたら、勝見君ともっと一緒にいられる?
彼女らしくなれる?
ねえ、どうしたらいい?


「坂井さん」


その低い声にゆっくりと顔を上げると、勝見君の表情は、今まで見たことないほど険しかった。
肩に置かれた両手から、ものすごい力を感じた。

どうしてそんな顔するの?
私には無理だと思ってる?
頑張るよ。
頑張れるよ。
だって勝見君のこと好きだもん。
一緒にいたいもん。

だけど私は、勝見君の心配そうな目から逃げるように視線をそらした。
その視界に、長い指先が伸びてくる。
その指先が頬を優しく横切っていくと、すっと伸びた指先を、たらたらと水滴が流れ落ちていく。


「……ごめん」


勝見君の声が、私の頭上に儚く落ちる。


__ごめんって、なに?