ちゃんと自分の目で確かめたかった。
見間違えであってほしかった。
夢であってほしかった。
夢なら覚めないと。
その思いで、自分の手をぐっと伸ばした。
だけど手にしたそれは、見間違えなんかじゃなかった。


「勝見君……これ、何?」


私から体をすっかり離した勝見君は、私のその問いかけに答えなかった。
だから、もう一度、震える声で聞いた。


「どういう、こと?」


紙から視線をゆっくりと勝見君に移すと、勝見君は困ったような顔で私を見ている。
だけど、ふっと表情を緩めた。
それは、私の困惑した表情を慰めるような柔らかい微笑みだった。


「俺、留学しようと思うんだ」


雨はまだ降っている。
弱まるどころか激しさを増して止む気配はない。
そんなざあざあと激しく降る雨に負けないくらい、勝見君は力強く言い切った。