キスのトリセツなんて、読んだことないよ。
だけど、キスの時って、本当に目をつぶる。
意識してつぶるんじゃない。
正確には、瞼が落ちる。

久しぶりに重ねた唇は、離しがたかった。
それは勝見君も同じなのか、離れても、何度も何度も押し付けられる。
初めてのキスではないのに、今までだって何度もキスはしてきたはずなのに、今日のキスは、今までしてきたキスのどれとも違う。
私の知っている勝見君のキスじゃない。
だって、キスってこんなに気持ちよかったっけ?

初めてじゃないのに、初めてするキス。
少しずつ激しく、乱れてくるキスに、勝見君も私の抱き方を変えていく。
キスの場所も、移動していく。
初めての感覚に、体中がフルフルと震えだす。

唇が離れた部分がしっとりと濡れていく。
そこに吐き出される勝見君の息がかかると、私の口元からも甘い吐息がもれる。
その中に、私の知らない私の声が混じる。

勝見君のキスがやまない。
いやらしく響くキスの音や、勝見君の荒い呼吸を聞きながら、私はぼんやりと天井を仰いだ。
先ほどまで真っ暗だったのに、やけに明るいなと思った。

天井全体が、柔らかな白い光で照らされている。

__なんでこんなに明るいんだろう。

その時、カッターシャツのボタンが一つ、ぷつんと外されたのがわかった。
胸元が急に解放されたはずなのに、どきんとはずんだ胸で逆に苦しさを覚える。