膝小僧に視線を落として、ずっとこのまま不機嫌なふりでもしていようかな、なんて考えていた時だった。
背中にずしりとした重みを感じて、息が止まった。
体に巻き付くたくましい腕は、先ほどよりもぐっと力がこもっている。
頬のあたりに、柔らかで薄い皮膚が重なる感触。
肩に預けられた、頭の重み。

「怖いなら、もっとくっついてもいいよ」
「……へ?」

何も言い返せないうちに、体が後ろに引っ張られて、しゃがんだ態勢が崩れる。
あっという間に、私は勝見君の長く伸びた足の間に収まり、勝見君の胸の中に体を預けていた。
勝見君の胸のあたりに収まった耳が、勝見君の心臓の音をとらえる。
どくどくと大きな音が聞こえてくる。
勝見君が息をのむたびに、ごくりと大きな音とともに胸が大きく動く。

「ほんとに、襲っちゃおうかな」

その声に、体が震え始める。
体の震えも、乱れる呼吸も、どうにも抑えられなくて、私は胸の前で硬く組まれた勝見君の腕に、思わずしがみついた。
それを合図に、勝見君が私に顔を寄せ始める。
それに引き寄せられるように、私も顔を勝見君の方に向けていく。
勝見君の手が私の頬に触れて、その動作を促してくれる。
唇が近づくと、無意識に首を伸ばしてしまった。