顔を前に向けて先を行こうとする勝見君を追って、私もスタートの暗幕をくぐった。
段ボールで作られた狭い道がぐねぐねと奥に続いている。
スマホのライトは広範囲を照らしてくれているのに、先が全く分からなかった。
床に何か敷いてあるのか、足元はふわふわとしておぼつかない。
狭さが息苦しさを連れてくる。

あたりをきょろきょろしながら進んでいると、急に勝見君が足を止めて、私もその背中にぶつかった。
ふわりと鼻先に、勝見君の感触が残る。
ぶつかった衝撃と、勝見君の感触と、そこから立ち上る匂いや体温に、心臓が一気にバクバクと走り出した。

「あ、ごめん。ここの仕掛け、外れてて。ちょっと持っててくれる?」

そう言ってライトの付いたスマホを私に手渡すと、勝見君は腕を伸ばして仕掛けを直し始めた。
スマホには、勝見君の手の温度がまだ残っていて、その温かさにまで胸が反応する。

長袖カッターシャツを折り曲げた袖から延びる勝見君の腕は、細い。
だけどよく見れば、そこにはきれいな筋肉がついている。
その腕に、思わず見とれてしまう。
すっと伸びた指先が、器用に仕掛けを直していく。
伸びた背筋が頼もしい。
第二ボタンまで外された胸元から、かすかに鎖骨が見えている。
そこに先ほどの、匂いと体温の記憶が重なる。