そしてたどり着いたのは、勝見君の教室だった。
教室の外には、「お化け屋敷迷路」と書かれた、ちょっとポップな感じの看板が出ている。
勝見君は教室の扉をそっと開けた。
それでも、カラカラっと、扉が開く軽い音が鳴った。

教室の中は真っ暗だったけど、窓際や廊下側の窓からかすかに光が入ってきていた。
教室に入ったところで、早速暗幕がかけられていた。
どうやらそこが入り口らしい。
入り口に置かれた簡易的な受付台の上には、懐中電灯がいくつか並んでいる。
ライトの部分には、なぜか色とりどりのセロハンが貼られている。

勝見君が懐中電灯のスイッチを入れると、そのセロハンの色が照らされて、壁や床に落ちる光は赤や黄色や青になる。
何でもないところでそれを見るときれいなんだろうけど、今この場でそれを見ても、不気味感しかない。
本格的な恐怖に、足がすくむ。

「こういうの、やだ?」
「うーん、良い考えだとは思うけど、今つけると不気味かも」

私がこわごわそう言うと、勝見君は懐中電灯のライトを消して、その代わりにスマホのライトをつけた。
懐中電灯のライトよりも小さい電球なのに、スマホのライトは広範囲を照らしてくれた。
白っぽい光が教室全体に拡散していく。

「こっちの方がマシ?」
「うん。そうだね」
「じゃあ行こうか」
「え? 今から入るの?」
「ちょっとだけね。大丈夫だよ。今日はお化け出ないから」

「あ、本物は出るかもね」と付け足して、勝見君はニヤッと笑った。