歩いているうちに校舎内がどんどん静かになっていく。
人気のない校舎は、しんとしていて、何となく不気味だった。
音楽室、美術室、家庭科室などの部屋は、各部活動の出し物の小道具や大道具でひしめき合っている。
視聴覚室や木工室などの普段滅多に入らない、存在すら忘れてしまいそうな教室も、更衣室になっていたり、五日目の体育祭用の用具や機材だったりが押し込められている。

一通り校内を一周しても、雨の勢いは収まることはなかった。
風が窓ガラスに雨を打ち付け、ごうごうと唸りを上げている。
雨の動きが、うねる様な風の姿をあらわにする。
ガラスにぶつかる雨の音は、まるでムチたたかれているようだった。
窓から見える木々も、ゆさゆさとその濃い緑を大いに乱し、枝を離れた葉っぱが、あちらこちらに飛び回る。

「ちょうどいい不気味さだなあ」

勝見君のつぶやきは、なんだか楽しそうだった。
そして私の手を引いて、ぐんぐん歩いていく。

勝見君がやってきたのは、私たち三年生の教室が並ぶ廊下だった。
ほとんどの教室の電気はもう消されている。
薄暗い廊下は本当に不気味で、今にも何か出そうだった。
その廊下を、勝見君はずんずん進んでいく。