「由美があそこにいたら、サッカー部員の意識と視線と、女の子の嫉妬の目を集めるだけでしょ。どちらにしてもあとで校舎裏パターンだよ」

「何それー」と大きな瞳を不服で歪ませる。

そんな顔も美しい。
女の私でもドキドキする。
だから私は、その目から逃げる。

「私は、あんな風にはしゃいだり、声出したりできないもん。恥ずかしいじゃん」

そらした目を、もう一度グラウンドに向ける。

「私は、ここでいいの」

視線の行きつく先は、サッカーコートの端っこ。

「ここがいいの」

視線の先に捉えたのは、男子二人。
一人は広瀬君。
そして、もう一人__。

彼が蹴り上げる緩やかなボールを、私は追いかけ続ける。
いつまでも続くリフティング。
舞い上がったボールは、必ず彼の足や胸や頭に戻ってきて、また緩やかに跳ね返される。
そのリフティングは、いつまでも見ていられる。
いつまでも目で追える。