今日は最終下校時刻も免除されて、準備が終わったクラスや委員会から帰ってもいいことになっている。
私のクラスはすでにグラウンドに屋台も組み立てて、看板も掲げ、準備はほぼ終わっていた。
教室には委員会の仕事で不在の人の鞄がぽつぽつと机の上に残っている。

勝見君が私の教室にやってきたのは、「迎えに行く」と別れてずいぶん経ってからだった。

「坂井さん」

名前を呼ばれると、胸がトクンと鳴るのと同時に、体がびくりと飛び上がった。
教室の扉の前に勝見君が立っているのを見つけると、私は思わず小走りで駆け寄った。
胸が躍るとは、こういうことなのか。

「ごめん、遅くなって。最後のセットが上手く組み立たなくて」
「ううん、大丈夫だよ。えっと、勝見君たちのクラスは、お化け屋敷だっけ?」
「そうそう。お化け屋敷迷路。坂井さんも時間あったらおいでよ」
「うーん、迷路は楽しそうだけど、お化け屋敷はなあ……」
「お化け屋敷、だめ?」
「好んで行かないかな。怖いの、苦手だし」
「ふふっ、かわいい」
「え? 今そういう要素あった?」