「勝見君、目立ちたくないとか言って、ちょいちょい目立ってるよね」
「え? そう?」
「だって今年も体育祭の対抗リレー出るんでしょ?」
「あれ? 坂井さんに言ったっけ?」
「言ってないけど、毎年のことだし。それに、体力テストの50メートル走、速かったし」
「あ、見ててくれたんだ」
「そ、そんなんじゃないよ。たまたま見かけただけで」

せわしなく手をひらひらさせて、頬に熱が集まってくるのを言葉と一緒に誤魔化した。
そんな私とは対照に、勝見君は穏やかな表情で私を見守る。

「とにかく、目立ちたくないなら手抜けばいいでしょ。50メートル走だって、本気で走らなければ選ばれることもなかったんだし」

完全に背中を向けてぶつぶつと言っていると、勝見君がぼそりと言った。

「できるわけ、ないじゃん」
「え?」

そっと振り返ると、勝見君の真剣な顔に迎えられる。

「坂井さんが見てるんだから、手抜くようなこと、できるわけないじゃん」

言葉が途切れると、勝見君は両手で持った段ボールを上手に胸と壁に挟んで、開いた片手で私の頭をそっと撫でた。
包まれた頭のてっぺんから、全身に熱が巡っていく。
そっと視線を上げると、勝見君はものすごく大人びた表情で私を見ていた。

「俺のこと、見て」

大人っぽい表情なのに、どこか甘えたようなその熱っぽい声に、心臓が急に落ち着きをなくす。
こんな勝見君は、初めてだった。