__会いたい。

ふと浮かんだその感情は、きっと私の本音。
勝見君に苛立ちや疎ましさを感じる一方で、まだそんな気持ちが心の奥底にある。
私はまだ、勝見君のことが、好きなんだ。
そう思うと、なぜだかほっとした。

「勝見君」

思わず声が漏れたその時、

「坂井さん」

その懐かしい声に、体が素早く反応して振り返る。
そこには、段ボールを抱えた勝見君が立っていた。
私は驚きで、声をなくした。

「何見てんの?」

勝見君の声で、我に返った。

「あ、これ。勝見君、また名前載ってるよ」

私が指さす方を、勝見君もじっと見る。
顔がじりじりと近づいてくると、それに呼応するように心臓が騒ぎ始める。
そして勝見君の優しい声が、吐息と一緒に私の耳を甘く撫でていく。