__私にはあと、何が足りないのだろう。
「私も、バイトしようかな」
「え? 何言ってんの? 今自分で全然余裕ないって言ったばっかじゃん」
「だって、勝見君が……」
そこで言葉が途切れた。
その声が、妙に震えていた。
__勝見君が、私のそばからいなくなっちゃう。
そんな予感がした。
私に愛想つかして、もっと違う誰かのもとへ行ってしまうんじゃないかって。
勝見君みたいに直感に自信があるわけではないし、直感が当たったことなんてないんだけど、その予感だけは、当たるような気がした。
「あかり、ちょっと疲れてるんだよ。ずっと元気ないしさ。息抜き大事だよ」
休んでるわけにはいかない。
死ぬほど勉強しているのに、成績は思うように上がってくれないんだから。
むしろ、下がってる。
勝見君に追いつこうと頑張るほど、空回りしている気がする。
息抜きなんてしてられない。
息抜きしている間に、今も勝見君は前に進んで、遠くに行ってしまう。
もっと頑張らないと。
もっと、もっと……。
頭の中が「もっと」でいっぱいになったとき、おでこがテーブルにぶつかるゴトンという派手な音が頭に鈍く響いた。