「あの、襟……」
順番を間違えてようやく出てきた小さな声は、かすれて震えていた。
だけどそのかすかな声を拾いあげたのは、たった一人。
視線を襟からふっと上げると、振り返ったその目と出会った。
その瞬間、あの日と同じ感覚が、体中を満たしていく。
__「坂井さんが、自信をもって人を好きになれるようになったその時は、また恋がしたいって思ったら、次の恋に進めるようになったら、その時は……」
あの時の園田君の言葉が、不意に聞こえてきた。
__そうなったら、その時は……
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…