「あの、襟……」

順番を間違えてようやく出てきた小さな声は、かすれて震えていた。
だけどそのかすかな声を拾いあげたのは、たった一人。

視線を襟からふっと上げると、振り返ったその目と出会った。
その瞬間、あの日と同じ感覚が、体中を満たしていく。

__「坂井さんが、自信をもって人を好きになれるようになったその時は、また恋がしたいって思ったら、次の恋に進めるようになったら、その時は……」

 あの時の園田君の言葉が、不意に聞こえてきた。

__そうなったら、その時は……