今日の由美は、学校ではおろしている長い髪をポニーテールにしている。
そのおかげで、いつもは隠れた輪郭がはっきりと見えた。
美人というのは骨格から美しいのかと、思わずそのラインを目でなぞる。
首筋にかかるおくれ毛やうなじがとても色っぽい。

「部活はとっくに引退してるんでしょ?」
「そうなんだけど……」

私はいつも数ターンしかもたない勝見君とのやりとりで得た情報を繋ぎ合わせる。

「他にもいろいろ忙しくて……毎日朝から晩までバイトが基本みたい。先週は旅行に行ってて、一週間音沙汰なしだったし。旅行から帰ったら連絡するってメッセージは来たけど、結局連絡はないし。そんな感じかな」
「あんたの彼氏はほんとに受験生?」
「……たぶん」
「勝見君、バイト何してんの?」
「カフェ」

「へー……」と相槌を打ちながら、店内をなめるように見渡す由美に、「ここじゃないよ」とその安易な行動をたしなめる。

「カフェって、意外だね」
「そうかな?」
「だって、勝見君が、カフェ?」

由美の言いたいことはよくわかる。
勝見君はカフェでバイトをしているイメージではない。

「そのカフェ、行ったことあるの?」
「うん、ちょっとだけ。でも、私にはちょっと合わないかな」
「どんなカフェよ?」
「はじめはスポーツカフェだった。カフェって言うか、喫茶店? ああいうところはスポーツ好きの人が集まるからさ、熱気がすごすぎてついていけないというか。ちょうどラグビーの試合が盛り上がってた時でね。行った時期が悪かったな」

頬杖をつきながら、あの日のことを思いだした。