店の外に出て「じゃ、またあとで」と手を振って背中を向けると、「勝見」と懐かしい響きが背中にぶつけられた。
その声で、一瞬だけ、俺の時間が高校生に戻った気がした。
振り向くと、そこにはやっぱり広瀬がいた。
今の姿の、広瀬だ。
俺の名を呼んだその声だけが、高校生のままだった。

「それで、お前はどうなの?」
「え?」
「直感は、正しかったか?」

広瀬のいたずらっぽい顔が、俺をとらえる。
その顔に、俺もにっと笑って答えた。

「行けばわかるよ」

俺はコートについた大きめのポケットに手を突っ込んだ。
そこから、鈴の音は、もう聞こえてこない。